33.ヨガは坐骨神経痛に効果あるか

ヨガはサンスクリット語で「ユジュ」(牛や馬と車をつなぐ軛)が語源で、体、心、魂を神に結びつけることの修行法として、紀元前4000年頃からインダス文明で始まりました。

ヨガは「心の動きを抑止すること」と定義されており、心の動きをコントロールするさまざまな鍛練により、苦しみから解放されることを目的としています。心と身体をリラックスさせ、健康的で充実した生活を送るためのツールとして、世界中に拡大し現在も新しいジャンルのヨガが次々と生まれています。ポーズでは体の歪みが矯正され、柔軟性や体力が向上するなどの効果があり若年層で非常に人気が広がりつつあります。

 

■ヨガと腰痛や坐骨神経痛との関係

私が脊椎外来を担当していますと、時にヨガの影響で腰痛や坐骨神経痛が悪化したとおっしゃる患者さんがおられます。こういった患者さんたちにお答えいたします。

 

ヨガをしたから痛くなるのか?

ヨガと腰痛や坐骨神経痛との関係について科学的に検証した報告がございます。慢性腰痛、坐骨神経痛の患者さんに投薬と生活指導のみを執り行う患者群とヨガを専門的に取り入れた患者群を比較した結果、治療介入後3ヶ月、6ヶ月において優位にヨガを導入した患者群で疼痛の寛解、柔軟性改善が得られていたと報告されております。

その作用機序として、腰痛や坐骨神経痛で血液内に上昇するとされる痛み物質(サイトカインIL6)はヨガのエクササイズにより減少することが明らかにされています。ヨガによるストレッチングポーズは末梢神経系の感受性、伸張性、運動性を改善する効果(Neural mobilization)があり、スタビライゼーションエクササイズは脊柱を安定化する効果があると考えられております。

 

以上のようにヨガは慢性腰痛や坐骨神経痛に効果があり、是非試す価値はあると考えられますが、過剰な腰の前屈姿位や背屈姿位、ヨガのやり過ぎは脊柱を支える筋肉を痛めたりすることで症状の悪化を招くこともあり注意が必要です。

 

参考文献
SPINE Volume 47, Number 10, pp 711–719
Front Neurosci 2016;10:372.

 

頭蓋底脊椎外科部長 横山 邦生

 

 

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