26.あるはないに勝る

「あるはないに勝る」

おそらく?故、渡辺 美智雄氏の言葉だそうです。達人芸を身に付け「文明の利器に頼らず、そんなものなくても別にできる!」と言いたいところですが、医療工学の進歩やAI導入は想像をはるかに超えております。「必要は発明の母」なりとはよく言ったもので、「夢」を抱き「ニーズ(必要性)」がある限り、達人芸もいずれ「標準化」されていくのが歴史なのだろうと感じるこの頃です。

 

■血管撮影・透視装置を京都府下で初導入

さて、この度、当院に待望の血管撮影・透視装置(ARTIS icono D-Spin、Siemens社)(写真1)が京都府下初!導入されました。加えて手術室同等のクリーン管理がなされることで、いわゆる『ハイブリッド手術室』が完成し稼働致しました。この10年「頭蓋内ステント時代」の到来を目の当たりにしてきたのですが、その構造はより繊細になってきています。

実際、本機で驚嘆する点は、(1)3次元撮影の際、煩雑な操作が不要であり、(2)ナビゲーションの如く、装置位置情報のメモリー機能が優れている、ので(3)透視(=被爆)線量は低減しますし、(4)検査・手術時間の短縮効果が期待できます。また、(5)仮想ステントなどの解析・シミュレートも迅速で、(6)代謝(脳血流)評価と併用しての多面的な考察が可能、などが挙げられます。

つまり「視る」に加えて、簡便で迅速な「解析」が可能になることで、手技をする医師の負担は軽減し、引いては患者様の診療に良き効果をもたらす、まさに「あるはないに勝る」を実感しております。

 

■脳動脈瘤のステント治療

脳動脈瘤に対しステントを併用した治療が普及してきており、インターネットでも知るところでありますが、実は大きく2つございます。

一般的なステントは、荒めのメッシュ構造したもので、動脈瘤内に塞栓するコイルが母血管にはみ出てこないように防波堤とするのが主目的「=支援型ステント」です(写真2)。
一方、フローダイバーターというステントは更に細かい目のステントを母血管に留置することで動脈瘤内への血流を激減させ血栓化を引き起こさせる道具「=血流分離型ステント」です(写真3)。

もちろんそれぞれに向き不向き・適応があり、すべての動脈瘤がいずれの道具でも使用できるわけではありません。

このフローダイバーターを用いた治療をするに際し「Verify Now」という血小板凝集能(血のサラサラ具合)を確認できる検査器機の支援の下、血管撮影・透視装置(ARTIS icono D-Spin、Siemens社)のような操作性・解析能力を備えた撮影装置で施行できることで、自信を持って地域の患者様に治療をさせて頂ける現状を「世界標準」と自負し、これからも最善を尽くしていく所存です。

 

脳神経外科 山田 誠

 

 

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