23.新型コロナ肺炎とコンサート

2020年より世界中に広がり始めた新型コロナウイルス。これまでクラスターを恐れて大規模集会や音楽ライブ・コンサートなどまで自粛されてきましたが、最近漸く、解禁となりつつありますね。

コンサートにおけるコロナ感染について最近の実験的研究について、神経救急部部長の杉江先生にまとめてもらいました。

 

■どんな実験、コンサート?

若者が中心に参加する屋内の大規模コンサート(ロック系のコンサート)における実験で、昨年の5月にフランスで行われ、本年の3月に Lancet Infection誌に報告されました。会場はイメージとして、日本の大阪城ホールを想像していただくと良いと思います。会場は最大で20,000人(5,700人はスタンディング、12,300人は着席)収容でき、実際のコンサートは、フランス等でも話題になったようで、ニュースになり、ニュース動画配信もあり、いわゆるノリノリのコンサートであったようです。


■どのような条件でコンサートを行った?

インターネットで応募した持病がない参加者(18歳から45歳)を2:1の割合で割り付け、コンサートに参加した3,917人とコンサートに参加しなかった1,947人をほぼ同じ条件として比較しました。

コンサート参加者は、必ずメディカルマスクを鼻から、顎まで着用し、マスクを外すのはコンサート主催者が配ったペットボトルを飲むときのみ許されます。ちなみにアルコールなどの飲酒は禁止されました。いわゆるソーシャルディスタンスに関しては制限なく、ステージの前では、参加者は踊る、ジャンプする、歌うなどの行為は許されました。また会場には適切な換気を行ったそうです。

また会場内にカメラを設置し、カメラとAIを利用して、会場内のマスク着用率を入場から、コンサート中、休憩時間、退場までチェックを行いました。
(ちなみに研究の参加者で、コンサートに参加者しない群に割り付けられた人には、その後のコンサートの割引券やフリーチケットが配られたそうです)


■結果

コンサートの3日前以内に一度、咽頭スワブでコロナPCR検査をして、コンサート当日、コンサートの七日後の2回唾液の検査を施行しています。コンサートの7日後に唾液の検査で、コンサートに参加した3,917人中、コロナに感染した人は8人(0.20%)で、コンサートに参加しなかった1,947人中、コロナに感染した人は3人(0.15%)という結果でした。

マスクに関しては、コンサート中ほぼ90%以上、きちっと着用できていたようです。コンサート主催者が配ったペットボトルの水を飲むときに、マスクを一時的に外していた印象です。


■結論は?

メディカルマスク(日本における不織布マスクに相当すると思われる)を着用する、会場の換気をしっかりするとの条件が整えば、新型コロナウイルスの感染は、コンサートを行っても行かなくても感染率は変わらないとの結論です。

これ以前の報告では、この報告より小規模のコンサートや、N95マスクを着用した報告もあるようですが、N95マスクは医療従事者が使うもので、一般の人の着用は難しいのではないかと考察されています。また研究がなされた時期は、新型コロナウイルスのアルファ株の時期と思われ、その後のデルタ株、オミクロン株にこの結果をそのまま当てはめることができるかは不明と報告しています。

文献
Lancet Infect Dis 2022; 22:341-348.

 

神経救急部部長 杉江 亮

English »