16. 眼窩底骨折について

先日、激闘の末、ボクシング2団体統一王者となった井上尚弥選手が、眼窩底骨折(がんかていこっせつ)をおこしたことを発表していました。この眼窩底骨折とはどのような病気なのでしょうか。当院の歯科口腔外科 木村功部長にわかりやすく説明していただきました。

 

Q: 眼窩底骨折とはどんな病気ですか?

A:  眼部や眼周囲に手拳・膝・野球のボールなどが当たったときに見られる特殊な顔面骨骨折です。複視(物が二重に見える)、眼球陥没(眼の落ち窪み)や頬~上口唇のシビレなどが生じます。ブローアウト骨折は同義語です。

 

 

Q: どんな検査と治療をするのですか?

A: 骨折の場所を精査するために、まずはレントゲンやCTで撮影を行い、骨折の箇所や骨のズレの精査をします。そして骨折による機能障害、感覚障害があるかの確認をします。骨折していてもズレがなく機能障害や感覚障害がない場合は経過観察することもあります。

 

Q: 手術をする場合はどのような手術方法になりますか?

A:  手術は全身麻酔で行います。骨折箇所が眼窩底骨折のみであれば当科では結膜から切開(経結膜法)を行い骨折部にアプローチします。これにより顔面の皮膚(顔面)に傷を作らず手術が行え、審美的にも優れた方法です。手術は基本的には折れた骨を元に戻してプレートで固定しますが、薄い骨が粉砕されて整復できないことも多いので、その場合には自分の骨や軟骨、人工材料(シリコン、チタン材など)を骨折部に移植します。

 

この他にも上顎洞(鼻の空洞)からバルーン(風船の様なもの)を入れて膨らませ下から骨折片を持ち上げて保存的に治す方法などもあります。

 

 

Q: プレートとはどんなものですか?

A:  プレートとは骨と骨を固定する板で、骨に穴を開けてスクリュー(ねじ)で固定します。チタン製のプレート・スクリューと、吸収性の物があります。吸収性のプレート・スクリューは、1年以上掛けながらゆっくりと分解、体に吸収されていきます。
プレートとスクリューの大きさや、吸収性を選ぶか非吸収性を選ぶかは、場所や骨折の度合いによって変わります。チタンプレートは一般的には抜去するために、もう一度手術が必要となります。

 

顎顔面には上顎骨、下顎骨、前頭骨、鼻骨、頬骨、頬骨弓など複数の骨が組み合わさり成り立っています。当科ではこれら顎顔面骨の骨折箇所、状態に応じて切開を眉毛外側、結膜、口腔粘膜、顎下部、側頭部などから選択し審美的、機能的回復を目的に患者さんと相談の上、最善の手術方法で行います。

歯科・歯科口腔外科
木村 功 部長

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