15. 内分泌疾患について

今回は、脳神経外科の疾患ではないのですが、患者さんにとってはあまり聞きなれない内分泌の疾患について、当院の内分泌センター/成瀬光栄センター長にわかりやすく解説していただきます。

Q:内分泌疾患とはどんな病気ですか

A:身体の中では多くのホルモンが体調と健康、更には命を保つために働いています。このホルモンが過剰になったり、不足したりする病気が「内分泌疾患」です。ホルモンを器官として、脳の一番下にある「下垂体」、首の部分にある「甲状腺」、お腹の腎臓の上にある「副腎」などが代表的で、各々の器官で様々な病気があります。図に体の中の内分泌器官と代表的な病気を示します。

 

Q:甲状腺にはどんな病気がありますか

A:甲状腺ホルモンが過剰になる「バセドウ病」、ホルモンが不足する「橋本病」、甲状腺の腫瘍が、代表的です。バセドウ病では、動悸、汗をかく、食欲は増すけれど体重は減少する、などの症状があります。橋本病では、疲れやすい、動作が遅くなる、寒さに弱い、などの症状があります。甲状腺腫瘍は甲状腺全体が大きくなる場合と一部に腫瘍ができる場合があります。認知症の原因として甲状腺の機能が低下していることがあり、この場合の認知症は甲状腺の治療をすることで改善が期待されます。

 

Q:甲状腺の病気の検査と治療はなんですか

A:血液中の甲状腺ホルモン測定や甲状腺エコーを行います。バセドウ病では過剰な甲状腺ホルモンの産生を抑える抗甲状腺薬や頻脈を抑えるβ遮断薬を服用、橋本病では不足している甲状腺ホルモン(チラーヂンS)を服用します。甲状腺腫瘍では甲状腺エコーで腫瘍の大きさ、形、性状を調べ、良性か悪性かの診断をして、手術か経過観察かを決めます。

 

Q:副腎にはどんな病気がありますか

A:副腎ホルモンが過剰になる「原発性アルドステロン症」、「クッシング症候群」「褐色細胞腫」、ホルモンが不足する「副腎皮質機能低下症」、偶然に発見される「副腎偶発腫瘍」が代表的です。原発性アルドステロン症ではアルドステロンという副腎ホルモンが過剰となり、高血圧、低カリウム血症(血液中のカリウム濃度が低くなる状態)など、クッシング症候群ではコルチゾールというホルモンが過剰となる結果、体の特徴的な所見(赤ら顔、ニキビ、多毛、手足が細くなる、皮下の出血など)、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症など、褐色細胞腫では動悸や胸痛、高血圧の発作などがあります。副腎皮質機能低下症では、体がだるい、食欲がないなど、全体的な活動性の低下があります。

 

Q:副腎の病気の検査と治療はなんですか

A:血液中の副腎ホルモン測定、ホルモンの反応を調べる内分泌機能検査、副腎腫瘍の有無を調べるCTやMRIなどをします。腫瘍があれば手術で摘出することが一番の解決法ですが、その他、各々のホルモンの作用を抑える血圧のクスリも服用します。早期に診断して、適切な治療をすることが最も重要です。

 

Q:副腎の病気を疑うきっかけは何ですか

A:高血圧、糖尿病、骨粗鬆症などの生活習慣病に紛れていることがあります。また、血液中のカリウムの減少、胸部や腹部のCTなどに際して偶然に見つかる副腎腫瘍なども発見のきっかけになります。疑わしい場合には医療機関を受診して検査する必要があります。

 

Q:原発性アルドステロン症とはどんな病気ですか

A:副腎にできる良性の腫瘍(腺腫といいます)から、アルドステロンというホルモンが過剰に分泌される結果、高血圧と低カリウム血症(血液中のカリウム濃度が下がる)を生じる病気です。全高血圧患者さんの約10%を占める重要な原因疾患です。脳・心臓・腎臓の合併症の頻度が高い一方、原因を特定できれば、手術により治る可能性があります。手術をしない場合でも、アルドステロンの作用を抑えるアルドステロン拮抗薬による薬物治療が可能です。血液検査で血液中のホルモンを測定することで、その疑いがあるかどうかを検査することが可能です。

内分泌センター
成瀬 光栄 センター長

English »