11. カロリーゼロ食品は、健康によいのか?
- 2019.09.03
- お知らせ
先日、当ブログ 06 で サプリメントのことについて述べました。最近さらに『サプリメントに死亡率低下や心血管障害の抑制効果がない』という質の高い研究結果が報告されています(*1)。サプリメントであれば本来の生活に追加という概念で不要ということはわかりやすいと思いますが、『代替品』で健康によい(悪くない)というイメージを持たせようとしている製品もあるので注意が必要です。
その代表例が、カロリーゼロ飲料や食品、あるいは電子たばこなどです。とりわけ、血糖値や肥満を気にする患者さんによく質問されるカロリーゼロ食品について、今回はお話します。
昨今の糖質制限ブームから
近年、よく目にするようになったカロリーゼロ食品。この背景には、カロリー過多(糖質過剰)→糖尿病・肥満→健康に悪いという考え方があると思われます。
人はどうしても甘いものを食べたくなります。そこで、『わかっているけどやめられない』『なんとか甘いものを食べても太らず、健康を害さない方法はないか』という心理を満たすため、糖の代わりに人工甘味料がたっぷり入ったカロリーゼロ食品が開発されているのです。『働かずにお金を儲ける方法』、『筋トレせずに筋肉を付ける方法』という話と同じような考えとも言えるでしょうか。人工甘味料に関するこれまでの研究結果をいくつか紹介します。
人工甘味料をとると、体重が増える
ヒトと動物の両方の実験結果から、人工甘味料を長く摂取していると、体重増加に関連することがわかっています。一方、人工甘味料を使ったから体重が減ったという研究結果は、ほとんど存在しません。さらに、人工甘味料の使用は、メタボ、糖尿病、高血圧、心疾患のリスクを高めると報告されています(*2)。
人工甘味料を毎日摂取することのリスク
人工甘味料を含む清涼飲料水の摂取回数が多い人ほど、10年間の観察研究で、脳梗塞、全認知症、アルツハイマー病の発症率は増加することがわかっています。人工甘味料を摂取しない群と比べると、毎日摂取する群は、脳梗塞が2.96倍、アルツハイマー病が2.89 倍高くなっていました(*3)。ただし、この研究では自由に食事しているため、人工甘味料を多く摂取する人は、もともと糖尿病を患っている人や血糖管理を要する人の可能性であったことを否定できないため、結果の解釈には注意が必要です。
情報の偏りに注意を
サプリメントや代替食品などに言えることですが、テレビ・新聞などのメディアは莫大な広告料をもらっているため、中立的な情報を提供してくれないという側面があります(スポンサー広告代理店タブーと言います)。
人工甘味料は糖の代替品として、摂取カロリーや血糖値の上昇を抑制する効果があるのですが、それが健康につながるかどうかは分かっていません。また、いまでは多くの食品に人工甘味料が使われているため、まったくそれらを摂取しないことは難しいかもしれません。しかしながら、人工甘味料には、摂取の量や頻度によって、弊害があるということを認識することが重要です。電子たばこも、米国では死亡症例が報告されています。十分な注意が必要です。
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Khan SU et al Ann Intern Med. 2019 Jul 9. Effects of Nutritional Supplements and Dietary Interventions on Cardiovascular Outcomes: An Umbrella Review and Evidence Map.
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N Engl J Med. 2012: 367; 1397-1440
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Pase MP et al. Sugar and artificially sweetened beverages and the risks of incident stroke and dementia -a prospective cohort study-. Stroke 2017; 48, 1139-46.
脳神経外科 川西 昌浩