09. 脳外科医が真夏に肺炎になった話
- 2019.08.23
- お知らせ
長い間ブログを更新できず、申し訳ございませんでした。医者の不養生とはよく言ったもので、風邪をこじらせて肺炎を患ってしまい、長期のお休みをいただいていました。
タバコは吸わない、晩酌も2年前からやめ、食事はたっぷり摂り身体を鍛えて『健康の塊』と自負していたのですが、あれよあれよという間に呼吸困難になるという人生初の経験をしました。今回は証拠に基づいたお話ではなくあくまで個人の経験談ですが、肺炎についてお話します。
しつこい咳と咳止めの薬
遅かった梅雨が明け、急に暑くなった7月の最終週のことでした。ちょっとした咳があったものの、当初は「夏風邪をひいたみたい・・・、早く葛根湯を飲もう」などと軽く考えていました。次第に咳が激しくなり少し発熱もしましたが、週明けには大事な面談や外来があり、この咳だけはなんとか抑えたいという気持ちから、夜にドラッグストアで咳止めの薬(瓶詰)を買って、瓶ごと半分くらいぐびぐびと飲み安心していました。普段、患者さんには「咳というのは本来、体が出したいものを出す反応なので、なるべく抑えないようにしましょう」と言っているのですが、我が身となると勝手な判断をしてしまい、おまけにお薬の量も明らかに多過ぎました。
次から次へと現れる症状
咳止めを飲み続け2日くらいは咳を抑えられているかのように思えたのですが、その後、悪寒を伴う高熱が4時間ごとに襲ってきて、さらには呼吸をする度に異常な音がするように(喘鳴:ぜんめい)。そのうえ、咳や痰が尋常ではない量になり痰の色も黄色から緑色に変わりました。冷静に考えればウイルスによる上気道炎(風邪)から細菌感染による肺炎を併発していたのですが、たかが風邪ぐらいで大騒ぎするまいと、異常な暑さの中ガタガタ震えながら解熱剤をこまめに服用して仕事を続けていました。
しかし、階段の上り下りで息切れをするようになり、咳の度に経験したことのない胸の痛み(胸膜炎痛)が生じて深呼吸すらできなくなり、完全に遅過ぎたタイミングでしたがさすがにこれはおかしいと、放射線科で胸部CT画像を撮ってもらいました。撮影が終わるや否や技師さんが駆け寄り、「先生、肺炎ですよ・・・、苦しかったでしょう」とのこと。画像を見ると、確かに立派な肺炎。しかも両側で結構な広範囲にわたり炎症(写真1)が広がり、少量の胸水(写真2)も溜まっています。
【写真1】正面から見た写真です。両側の赤丸で囲んだところに白い斑点がたくさんできています。炎症(肺炎)を起こしていることを示しています。
【写真2】水平断面を下から見た写真です。赤丸で囲んだように白い影がたくさんあるとともに、黄色の矢印のところに少量の胸水がたまっています。
的確な治療と十分な休養が必要
心配した後輩が呼吸器内科医に相談し、早速治療を開始。安静臥床をとり解熱剤で解熱した合間に、体位変換をして痰をこまめに出すようにしました。途中からは咳の出し方も慣れ、咳ばらいをせずに「はーーっ」と息を吐き出すようにして肺の奥から痰を出せるようになりました。
脳外科の患者さんは合併症で肺炎をよく起こされるので、これまでごまんと症状を診てきたのですが、酸素飽和度が下がるとどんなに息苦しいか等、経験して初めてわかることもたくさんありました。今回は的確な治療とたっぷりの休養のおかげで比較的早期に治りましたが、ご高齢の方が肺炎を起こすとさぞ大変で危険ということも身をもって知ることができました。
肺炎の予防と早期発見のために
肺炎の予防と早期発見のために、今回改めて気付いたことは以下の通りです。どれも当たり前のことばかりですが、みなさんのご参考になれば幸いです。
・風邪をひいたら、休養が大切
・むやみやたらに、咳止め薬を飲まない
・風邪の症状以外に、悪寒を伴う高熱、緑(黄)色の痰、呼吸時の異常音、息切れ、胸の痛みなどがあれば、早めに内科を受診する
など
脳神経外科 川西 昌浩