武田病院グループ:保険・医療・福祉のトータルケアを提供する京都の病院

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たけだ通信 No.110(8月発行)

武田病院グループ理事長 武田隆久

風向きの変化が多い医療政策 グループの体力と質を高め必要とされる医療・介護の提供を堅持する

photo_rijicho.jpg【トピックス】
武田病院グループ 理事長
 武田 隆久

医療崩壊が懸念されるようになる前は、「医療が国を亡ぼす」と言われていたことを皆さんはご存知でしょうか。一方的に医療者に原因があるような論調もありましたが、現在では、それも緩和されてきたように感じます。とはいえ、医療費を取り巻く問題が厳しいことは変わりません。今回はこの「医療費」に関わる問題と地域の医療者の役割りについて、お話しを致します。

経済活動を下支えしている医療・介護サービス

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 この6月に私は、京都私立病院協会と京都府病院協会共催の「第51回京都病院学会」で学会長を務めさせていただきました。

 この学会は、臨床での成果について演題発表するなど、我々医療者が『研鑽して皆さんにより良い医療を提供すること』を大きな目的としています。当日は、基調講演・特別講演として、病院機能再編の予測や医療費について専門家が解説を行いました。

 なかでも、株式会社経世論研究所の三橋貴明所長の「医療、介護亡国論は本当か?」と題した講演は印象的でした。三橋所長は、「デフレの日本経済を下支えしたのは医療費」であるとの趣旨でお話しをされ、「必要な医療や介護サービスを提供できないことこそが亡国」との見解を述べられました。

 現在、わが国の患者数の推計(入院・外来)は2000万人以上で、要介護・要支援認定を受けた方は620万人を超えています。これを支える医療・介護・そしてこの関連業種の従事者は462万人と言われています。

 これが経済の下支えになった、という見解は大変、納得できるお話です。

 確かに、医療費が約40兆円、介護費が約10兆円とされ財政の維持が懸念されているのですが、これら医療・介護も立派な経済活動であり、また、このサービス提供があるから就労できる方も大勢おられるのです。

 例えば、透析治療をしながら会社に勤めている方や、親御さんをデイサービスにお願いして働いている子供世代の方などです。

 安心ある暮らしのために医療・介護の保険財政を守るのは大切なことですが、現実のご家庭をみて対応を行わないと、大きな間違いにつながりかねないと思います。

亡国の原因は医療費か、医療崩壊か

110_rijicho_2.jpg 実は医療界においては、いたずらに目先の費用を下げようとして、失敗する例がこれまでもありました。

 その代表が先ほどの『医療費亡国論』です。膨れ上がった医療費が国を亡ぼすというもので、1980年代から国はこの考えのもと、医療費の抑制政策をはじめました。その代表的な施策が、医学部の定員を減らす「医師数の削減」です。そもそも、医師数を減らしても患者さんが減る訳ではありませんが、医師が過剰になるとの予測のもと、2003年から実際に削減が行われました。定員数が減ったうえに、新医師臨床研修制度が始まり、地方を中心に全国的な医師不足となりました。

 一方では、医療費の伸び率の抑制政策が始まり、診療報酬が削減され、医療機関の経営体力は損なわれていきました。これら政策が相まって、救急医療の取り止めや、診療科の縮小、閉院が相次ぎます。「救急搬送に対応できない」など、皆さんもお聞きになったのではないでしょうか。

 高齢化が進行し、高齢者人口が増加すれば、必要となる医療費も増えるのは当然のことなのですが、これを無理に抑制しようとした結果が「崩壊」につながったのです。

安心ある暮らしのため現場の医療・介護を堅持

 実際のところ、地域で医療・介護を支えているのは、一つひとつの医療機関であり介護事業所です。政策に対し、言うべきことは声を上げつつも、現場を堅持していかなければなりません。政策の風向きが変わっても、必要とされる医療・介護をしっかりと提供できる体力を身に着け、効率化の努力もしっかりと行っていくべきだと考えています。

 当グループを例にあげれば、救急医療分野においては、医仁会武田総合病院が年間約4200件の救急搬送に対応。6診療科の医師が24

 時間365日体制で診療にあたっています。

 康生会武田病院においては、年間約5000件の救急搬送に対応。他の病床と切り離し、患者さんの夜間受け入れを1ヵ所に集約化する「夜間救急入院病床」を独自に設置。病棟を充実させるため外来棟を開設するなど、さらに医療機能の充実を図っています。

 増大する救急需要に対応する一方で、退院後は開業医の先生や介護事業所に対応をお願いするなど、役割りを分担しチームで患者さんを支える「地域包括ケア」の推進にも力を入れています。

 今後も「思いやりの心」を大切に、地域の皆さんとともに歩んでいく所存です。ご協力を宜しくお願いします。

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