武田病院グループ:保険・医療・福祉のトータルケアを提供する京都の病院

  1. トップ
  2.   >  広報・読み物
  3.   >  たけだ通信

たけだ通信 No.91 (2月発行)

武田病院グループ会長 武田隆男

岐路に立つ病院経営

photo_kaicho.jpg【エッセー】
武田病院グループ 会長
 武田 隆男

■岐路に立つ病院経営

平成20年、干支の回り年である子年が始まりました。医療におきましても、国の構造改革路線に従った医療制度改革を受けて、「後期高齢者医療制度の創設」、「特定健診・特定保健指導の導入」といった新しい医療制度が取り入れられます。また、今年度の診療報酬の改定は、昨年末に行われた政府与党の閣僚折衝にて、診療報酬本体は0.38%の引き上げが決まっています。診療報酬本体のプラス改定は8年ぶりのことですが、診療報酬全体としては、薬価や材料価格が引き下げられるため、今回もマイナス改定と言われています。次回の改定こそは、質の高い医療提供に充分なプラス改定となることを期待します。

日本の病院経営はまさに岐路にさしかかっています。中小の病院のみならず、大病院とて安穏としておれない状況にあります。厚生労働省が昨年末に行なった「平成18年医療施設調査」(動態調査)の概況を見てもそれは明らかです。一例として、この数年、全国的に病院・医療施設数の減少が続き、平成2年には1万96施設あったのに、とうとう9千施設を切ったのをはじめ、ご存知のように小児科・産婦人科を標榜する一般病院も減少の一途をたどっています。

財政のみに目を向けた医療政策がもたらした結果ですが、医師の奉仕の精神や医師の善意をも損なうような医療政策であってはならないと思います。医療は何よりも人の命を大切にする崇高な仕事です。その医療に携わる医師を尊敬せよとは言いません。医師の仕事は奉仕であることを皆が理解しているかどうかです。患者さんの一日も早い快復のため、プライベートタイムを費やし、何時あるかも分からないコールに対応するため行動範囲を自主的に制限しています。休祭日でもほとんどの医者が病院に顔をだしています。地域の皆様の元気な笑顔を願ってのことです。皆が豊かになり、誰もが大切にしだしたプライベートタイムをも地域医療のために、ごく当たり前のように費やしています。地域の方々の有り難いという気持ちでモチベーションを高めることによって、誇りを保っているわけです。この医師としての誇りがなくなれば奉仕医療などやってられません。医師以外の医療人も同じことです。地域の方々の医療人に対する気持ち一つで医療は栄えもしますし崩壊もします。

同様に、教師、警察、自衛官など公務員への敬意も薄らいでいるのではないでしょうか。公務員の心無いごく少数の行為を面白おかしく編集された報道をすべてと思い、公務員全員に偏見を持ち公務員への感謝の気持ちを忘れがちになる傾向はないでしょうか。各々の仕事をもっと深く理解し、感謝の気持ちを高めなければなりません。このような感謝の気持ちがより良い社会を築くのではないでしょうか。

武田病院グループのグループ間の機能分化とその役割はかなり明確になってきています。循環器疾患をはじめとする救急救命医療に主眼をおく武田病院、総合力が柱の医仁会武田総合病院、地域密着の宇治武田病院、東山武田病院、リハビリテーションの質を得意分野とする十条リハビリテーション病院など、それぞれの機能を一層充実させるとともに、各施設の足りない部分を連携によって補うことに更に力を注いでいただくことを期待します。

そして、職員各位が、日常業務に専念し、役割を果たしていることは、重々承知しています。しかし、個々の役割だけを全うすることは大切なことですが、チーム医療の本意としての「他への手助け」「周辺への気配り」にも配慮していただきたいと思います。自分の周辺で、ちょっと気づいたことを放置しておくのではなく、自身で解決するか、できなければ周りの関係者に報告する。それだけでもミスの多くは防げるはずです。

「患者本位の医療の徹底」も当院では周知が進んでいます。とは言え、あまりにへりくだって、患者さんを「お客様扱い」にし過ぎるのはどうでしょうか。しかしながら、患者・家族からのクレーマー対応には相当な労力を割いています。特に病院に対するクレーマーが増加していることは、近年一層顕著になっています。少しの思いやりと、やさしい応対によって、患者・家族の方々がクレーマーになることからも防げます。より患者さんのための医療提供により一層の努力をお願いします。

「ムダを省く」ことにも留意をお願いします。医療機関としては省力化が困難な以上、各自の職場周辺で、できるだけムダな経費を削減していかなければなりません。気づいたことは見過ごさず、それぞれのカンファランスで指摘し合い、ムダを省くよう実践していただくよう願います。

思いつくままに羅列しました。冒頭にも申しましたように、今年は子年です。子には種子という意味があります。そういう意味でもスタートの年です。理事長のもと、現状分析を充分に行い、より多き実りを期待して新たな種を蒔いていただきたいと思います。

前の記事 一覧を見る 次の記事

Copyright © 2014 Takeda Hospital Group. All rights reserved.