武田病院グループ会長 武田隆男
【エッセー】
武田病院グループ 会長
武田 隆男
■地域医療の充実
今、国民の健康に対する欲求は次第に高まっています。
しかし、医療政策は財政を重視するがあまり国民のニーズを満たすにはほど遠いものとなっています。
そのため各医療機関は、恒常化された診療報酬のマイナス改定のもと、高まる健康ニーズに応えるための経営努力を行い、正に献身的な奉仕的な医療を提供しています。
予てより医師不足や看護師不足は叫ばれていましたが、臨床研修医制度や看護基準(7対1)の新設は、医師の大都市医療施設への集中化や看護師の公的医療施設への集中化を促し地域の医療環境を悪化する弊害を生じさせています。
医師不足の面では、武田病院グループでは、平成16年度からスタートした臨床研修制度で、安定的な研修医の希望者に恵まれています。
しかし、全国的には医学系大学の派遣医師の引き揚げにより、その荒波をもろに受けている地域が多いのも事実です。不足する医師の確保を急ぐあまり、とてつもない高額の待遇を提示した公的病院もあると耳にしています。
その対策として来年の医学部入学定員を500人程度増やすという話も聞かれます。厚労省は以前より、「日本の病院数はまだまだ多く、医師充足率も十分である」としていますが、日本の人口千人当たりの医師数は2.1人でOECD平均の3.1人を大きく下回っていますので、1000人規模の定員増にしてもおかしくないと思います。
看護基準の見直しも同様です。
いわゆる「7対1看護」が、民間病院の看護師不足を引き起こしているのも間違いありません。
もともと、慢性的な看護師不足の中、各病院は看護師育成に多大な努力をして地域医療に貢献してきました。
そのような折、どのような視点からの発想か、7対1看護基準が新設され、何らかの形で公的な補助金をもらえる大病院や医療センターなどの公的病院が、地域医療の機能バランスを無視して、自らの医業収入増のみを図るために厚遇で看護師募集を行ってきました。
これにより、民間病院に急激な看護師不足が生じ、病床や救急医療の縮小などを余儀なくされ、地域医療に支障をきたしています。
国民は公的病院には政策医療を期待し、公的病院を採算性で評価することはありませんが、度重なる診療報酬のマイナス改定のため経営が悪化し、民間病院のみならず、地方自治体病院等も存亡の危機に直面しているところも多数あると報じられています。
そして、地元京都でも府内の自治体病院が、閉院の道をたどるケースもあるやに聞いています。
これからの病院経営は、総花的なものではなく、地域で特色ある医療の展開が望ましいのですが、「不採算部門の切り捨て」は医療の性質上不可能です。
グループ病院では、総合病院、急性期病院、回復期、慢性期病院として、地域医療の重要な役割を担っております。
地域に必要な診療科を不採算であると言って止めてしまうわけにはいきません。
公私を問わず地域に必要な医療は不採算であっても病院が安定して存続できる医療政策を期待するところです。
このような医療環境の厳しさにもかかわらず、職員の皆さんの一丸となった取り組みには、頭が下がる毎日です。
日常の患者対応や最新の医療技術の提供はもとより、危機管理や技術研磨への自主的な取り組みがなされています。
開業医の先生方を含めた定期的な症例検討会、学会への積極的な参加、また、院内外での緊急事態に対する救命救急部や災害看護ナース会の救命救護訓練の実践、認定看護師への挑戦等々、献身的な活動に取り組んでくれています。
これらのことも、当病院グループのみならず地域医療の充実につながっています。
費用を圧出する医療政策、心の通わない医療制度の変化がおきた今こそ、人間味あふれる安心・安全・健全な医療構築が求められています。
そのためには、職員一人一人が趣味をもち、異職種の方々との触れ合いの機会を増やし、より心豊かになることも必要と思います。そうすることが、客観的に病院職員としての自分を見ることができ、「思いやりの医療」の実践により生かされると思います。
私ごとですが、子供の頃から絵を描くことが好きで、絵画を趣味の一つとしています。
そして、入会しています絵画クラブの政経文化画人展やチャーチル会の展覧会には、必ず作品をだすようにしています。
そうすることにより、趣味に費やす時間を捻出するようにしています。
また、絵心を奮い立たせる緊張感が、元気の源となり健康維持にも役立っているとも実感しています。
職員の皆さんも、有意義な日々を過ごしておられると思いますが、趣味にもより時間を費やし、人間味をより養い、元気、健康を一に心得て、地域医療への更なる貢献を期待しています。
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