武田病院グループ会長 武田隆男
【エッセー】
武田病院グループ 会長
武田 隆男
■日本のこころ
アメリカのサブプライムローン問題は、短期間で世界を経済恐慌に陥れました。サブプライムローンはその担保信用保証が以前より問題となっていましたが、問題をごまかしたままローンを続けたため、世界の金融機関や投資家にそのつけを押し付ける結果となりました。アメリカのマネーゲームの恐ろしさです。日本経済もサブプライムローン破綻の影響を少なからず受けています。
一時期、日本の文化に合わないアメリカの市場原理主義が一世を風靡していましたが、昨今、その市場原理主義に基づく構造改革の影の部分がクローズアップされています。
医療は、市場原理主義を入れようという試みは、何とか食い止めることができました。我々が市場原理主義を反対した理由は、医療の根本、人の命にかかわるサービスは誰もが平等に受けることができる。そのためには、相互扶助を厭わない。日本人特有の思いやりの心を損なうからです。国も「株式会社の医療参入」や「混合診療の導入」は日本の健全な医療を阻害することが分かってきたようです。オバマ大統領も相互扶助に基づく公的国民皆保険の導入を公約としています。
今、医療の崩壊が問題視されています。
国は、バブル崩壊から構造改革にかけて、大手の金融機関やメーカーに有利な投資や改革を行いました。その一方で、医療費は圧縮されました。病院収入の2分の1は人件費です。医療費が圧縮されると、人の数を減らさざるを得ません。その中には、医師も含まれます。マイナーな診療科は閉鎖せざるを得ませんし、希望する医師も少なくなります。地域医療に支障をきたすようになります。このような中で、一部の官公立病院やそれに準じる病院が潤うような看護基準、7対1看護の新設がなされました。その結果、看護師の偏在を作ってしまい民間病院の多くは看護師不足となり、病床の削減など地域医療に支障をきたすようになりました。規制緩和をうたいながら、何故の規制強化だったのでしょうか。
健康面でも国民が不安をいだくようになったのは、厳しい中で捻出された財源の投資先間違いの結果です。ただ、来年度には、診療報酬改定が予定されています。構造的な不況や、国の財源の問題もあり、厳しい改定となることも予想されますが、国民の健康と安定した職場の拡大のためにも将来に禍根を残さない改定を期待しています。
日本では、多くの人の物欲は満たされていると思います。その分、心は物足りなさを感じているように思われます。人と人との繋がりが希薄になったからでしょうか。物欲に走りすぎ、賞味期限の改ざん、食べ残しの使い回し、食肉偽造、産地偽装など、人を騙してでも金儲けをする。それも食の世界で詐欺を働くような心無き人が日本にもいることは嘆かわしいことです。
当病院グループの基本方針は、Bridge The Gapsです。人と人との触れ合いを大切にしています。職員間は勿論のこと、職場をとおして地域の方々と、趣味の世界や地域社会の活動において、多くの人々との輪を広げ、触れ合いの中で、互いの鏡となり、より「思いやる心」を養うよう奨めています。そして、触れ合いのなかから相互扶助の気持ちも芽生えてきます。このような皆さんの努力が、地域の方々に安心を与え、地域より当グループが高い評価を得ている一因と思っています。
今後とも、より人を大切にし、より「思いやる心」を養い、グループの更なる発展のために、グループにおいて、地域において活躍されることを期待いたします。
Copyright © 2014 Takeda Hospital Group. All rights reserved.