武田病院グループ:保険・医療・福祉のトータルケアを提供する京都の病院

  1. トップ
  2.   >  広報・読み物
  3.   >  たけだ通信

たけだ通信 No.97 (9月発行)

武田病院グループ副理事長 武田道子

救急医療について思うこと

photo_fukurijicho.jpg【エッセー】
武田病院グループ 副理事長
康生会武田病院 名誉院長
社会福祉法人 青谷福祉会 理事長
 武田 道子

■救急医療について思うこと

救急搬送の"たらい回し"に対しては、抜本的な改善の目途は立って居りません。疲弊する現場は、"医師が足りない"とか"手当てをつけて欲しい"と云う訴えが起って来ています。しかし、これらは対応療法ばかりで解決にはなりません。

医師数を増やせば、バリバリ働いてくれる医師になるのは10年後、へき地の医療に対して、へき地で働いてくれる学生を入学させると云う枠も、長く働いてくれると云う確約はありません。つまり、対応療法ばかりでは解決されない問題です。救急医療体制は、一次、二次、三次救急と、ピラミッド型であるべきものです。しかし、今やこれは崩壊し、二次救急への搬送が崩壊し、重篤患者さんに専念すべき救命センターへも軽症患者さんが増えて来て居ります。そして、休日夜間診療所の方は御利用者さんが減少して来て居るのが現実なのです。

患者さんは、専門医や大病院志向がうかがわれるような傾向になってまいりました。更に、コンビニ受診が増加して来て居ります。夜間に行けば、待たなくて診てもらえると云った考え方をしている人に多く、ひどい人は夜間にお薬をとりに来る人も出てまいりました。夜間はその時だけのお薬しか出しませんが、後日、夜間は1日分しか出してくれなかったと文句を云って来る人もあります。救急車をタクシーがわりに使う人もあります。今後は病院機能分化や集約化など、地域の状態にあった救急医療体制を再検討しなければならないと思います。地元の開業の先生方が初診を診て下さることが必要だと思います。

現代医療は、あまりにも専門医の育成に力が入り過ぎ、一般家庭医、総合診療医の育成に力を入れなかったことも、救急がスムーズに行かなくなった原因なのでしょう。今、この総合診療医の必要がとりあげられ、総合診療の認定医制度がはじまったところです。

t-tsushin97.huku1.jpg昔、私達が医者になった頃は、なんでもこなせる雑科医の時代でした。専門医は大学か大学院のみで研究を行っている方々でした。しかし、今の患者さんは、いきなり専門医を好まれます。しかし今、ようやく一般の家庭医に受けていただき、その上で病院へ送って下さることが必要だとわかってまいりました。総合診療を行う医師こそが一番必要だと云うことになり、最近その育成が始まったばかりです。

地域の開業医の先生が、地元病院の救急担当や当直をして下さっているところも出てまいりました。このように、病診連携がうまく行くようになれば、今問題の"たらい回し"も解決出来るのではないでしょうか!消費税があがることは、もう間違いない事実でしょうが、医療、福祉の面へも、うるおって来ることを願いたいものです。国民が元気でなければ国が元気になれないのですから。

前の記事 一覧を見る 次の記事

Copyright © 2014 Takeda Hospital Group. All rights reserved.