武田病院グループ会長 武田隆男
【エッセー】
武田病院グループ 会長
武田 隆男
■災害に強い医療を目指して
東日本大地震後の巨大な津波による、広範囲の地域を巻き込む未會有の自然災害と、福島原子力発電所のメルトダウンによる放射能汚染という、いわば人災は、日本という国の存立をさえ脅かす恐怖として、今も私たちの脳裏から離れることはありません。一日も早い復興を願うとともに、被災者と残念ながらお亡くなりになられた方々のご冥福を、衷心よりお祈り申し上げます。
武田病院グループとしましても、地震の発生直後から、グループ10病院や他の施設での義援金の募集を全職員と地域に呼びかけるとともに、被災地や周辺からの透析患者さんや、その他の患者さんの受け入れを始め、全病院での即時かつ緊急の対応を整えました。被災地からはあまりにも遠く、隔靴掻痒の感は否めませんが、せめてもの手助けと、支援の輪がこの地から大きく広がっていくことを願っての応接と考えた次第です。
それにしましても、時として牙をむく、こういった自然の猛威に対して、人類はいかに無力であり、地球上の生命体の一種類として、立位置をわきまえるべき事を痛感すると同時に、人の生命を預かる医療施設として、災害と緊急時に強い医療でなければならないことを痛感しているところです。
武田病院グループでは、グループ全体で地球環境に配慮した電力消費削減などエネルギー消費問題に取り組んでいますが、このほど、社会福祉法人青谷福祉会『軽費老人ホームヴィラ城陽』が、CO2排出量や光熱費削減といったエコ設備の充実を実現した功績として、近畿電力利用合理化委員会から表彰を受けました。
患者さんに対する治療全般から、食住など、エネルギー問題は医療施設にとっては欠かせない問題です。グループ全体でのエネルギーの効率化を図っていく中で、「電力だけ、ガスだけに」というエネルギーの頼り方についても、もう一度考え直さなければならない時期だと思っております。
このように日本全体があらゆる面で危機的状況を抱えているわけですが、わけても医療を取り巻く環境は、厳しいものがあります。相次ぐ診療報酬を、医療制度の配慮のない改悪により、医師などのマンパワーの不足を招く等々、結果として、全て医療現場で提供者も患者側も辛い思いをし、充分な診療が出来ない場面が来ているといって過言ではありません。
今の状態で、医療制度や診療報酬を云々するのはどうかと思いますが、この非常事態の中で、東北の医師をはじめ、医療従事者の献身的な働きを見ると、医療は如何に必要で、崇高な行為である事を認識されたと思います。この混沌とした政治、経済の中で、一方的に、しわ寄せが医療に向くという事がないように願いたいものです。
放射能安全基準が1mSvから20mSvで問題がないと、政府が云っています。科学的根拠はなしです。
自然被曝量は、世界平均で年2.4mSv、日本は1.5mSvです。どこから20mSvは出て来たのでしょうか。米国医師団体は、20mSvは安全といえぬと言っています。これは早急に撤回しなければいけないと思います。
話題にあがらない被災地の問題です。ある週刊誌が感染大爆発というテーマで、ヘドロと感染と動物の死体が病原体の温床になっていると警告を発しています。被災地の援護作業と同時に、感染症対策の基本を忘れずに作業をすすめていただきたいものです。
「災い転じて福となす」の諺のように、危急存亡の時こそ、日本の医療の再興がなされるべきです。
私共武田病院グループ全施設、全職員が一丸となって、災害・緊急時に強い医療機関になるために、「今求められているものは何か」、「何ができるのか」を各自考え、実践していっていただきたいと願う次第です。
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