武田病院グループ専務理事 武田隆司
【エッセー】
武田病院グループ 専務理事
医療法人財団 康生会 理事長
武田 隆司
■雑 感
あの震災から早くも一年が経過した。
ここ京都では何ごともなかったような日常が戻ってきている。
それは良いことだと思う。
しかし現実には被災地での復興は遅々として進まず、人々の苦悩は続いていることを忘れてはいけない。
震災復興を掲げて何度も繰り返される補正予算も、現実には霞ヶ関が自由に操作しており現地には殆ど届いていないと聞く。
また、何を思ったか昨年末に早々と福島第一原発の冷温停止宣言をした総理は、今度は「命を懸けて」消費税を上げると宣言している。
命を懸ける方向性の不思議さはさておき、ひとつの案として国会と霞ヶ関、多額の資本注入を受けている東京電力も引き連れて福島原発近隣に移転していただくというのは如何だろう?
そうすれば都内一等地の賃貸収入が期待できるし、売却すれば売却益に加えて高額の固定資産税が安定的に入って来る。
また現在は廃墟と化している地域に、超高額な給与を受け取っている人々がワンサカやって来るのだから地域経済も確実に活性化するだろう。
もう事態は収束に向かっているというようなアナウンスが事実であれば、命を懸けるよりも安全に国家財政が立直るのだから、なかなかおトクな話だと思うのだが...
などと思いのままに書き始めると、いつもの品がない毒舌コラムになってしまい、せっかくの100号記念に水を差すというものだ。
今回は辞退しようかとも考えたのだが、ごく一部にこのコラムを楽しみにしているという希有な人がいると聞く。
そんな奇特な読者のためにもトーンを下げ気味に書いてみよう。
高尚な会長対談記事の品位をあまり下方向に引っ張ってもいけないので...
私がこの「たけだ」に初めて寄稿したのがいつだったのかを調べてみると、それはNO.63で1999年発行であり、もう13年も昔のことであった。
「時流を見つめ、されど追わず」などというタイトルで、初々しく経営陣に入ったことに対する不安な胸の内などを綴っている。
当時はまさか自分が現在のような「やさぐれた中年オヤジ」になるとは考えてもみなかったことだろう。
あの頃に戻りたい...
そういえば更に遡ること数年、当時の私はまだ空手の試合に出場していたこともあり、かなり頑張って筋肉をつけて体重を増やしていた。
最大で80kg近くもあり髪型もGIカットにしていたこともあって、心はピュアだが外見はプロレスラー崩れのようであった。
しかし経営陣に入ってからというもの、自分の立ち位置が判らなくなってしまい、知らず知らずのうちにストレスが蓄積していたのだろう。
一気に体重が15kg程減って65kg 程度にまで落ち込んでしまった。
周囲からは「絶対に精密検査をした方が良い」とかなり本気で勧められていたが、たぶんストレス性だと自己判断していたので聞く耳を持たなかった。
するとマイコプラズマ肺炎を患ってしまった。
当初は夏風邪でも引いたのかと思ってあまり気にしていなかったのだが、薬を飲んで寝ていても一向に回復せず。
真夏であったにも拘らずトレーナーを何枚も着込んで布団に包まっても震えが止まらず、ここでようやく体温を測ってみると実に41℃となっていた。
仕方なく病院へ向かい、診断がついて投薬を受けて回復した。
まったく、医者の不養生とはよく言ったものだ。
ちなみに、この時初めて「ストレスは免疫力を低下させる」ということを実感した。
その後、良く言えばタフに、悪く言えば図太くなってしまい、無事に体調も回復し体重も75kgまで回復した。
そのままずっと同じ体重をキープしていたのだが、6年程前に腰椎ヘルニアの手術を受けた際に血液検査を受けたところ、血糖値・中性脂肪・コレステロール・尿酸に肝機能などが軒並み異常値を示し、40歳にして成人病に向かって全力疾走している自分に気づいて驚いた。
本来、定期健診を受けていれば把握できることだったのだが、正に不養生...
思えば当時もまだ体重と筋量をキープするために、胃袋に隙間があれば肉や炭水化物を詰め込んで、水の代わりに生卵を飲むという狂気の食生活をしていたのだ
から当然の報いか。
その事実に気づいて以後は大きな身体を諦めて意図的に体重を落とし、現在に至るまで62kgの体重が続いている。
これにより検査数値は全く正常になり、肝臓も日々大量のアルコールを分解し続けてくれている。
やはり一定以上の年齢で必要以上に体重を増やすことは、身体に良くない影響が現れる可能性が高いのだということをここで実感した。
何事も経験だ。
メタボリック症候群の意義については諸説あるようだが、少なくとも我々日本人にとっては意味のあるものなのかも知れない。
その理由として、古来より日本人の食生活は非常に粗食であり、玄米・穀物・野菜と少量の魚介類などを中心に構成されていた。
つまりそのような食生活に対応する身体構造になっているのだ。
現在、日本の糖尿病人口は1076万人でワーストランキング世界6位にランクインしている。
成人人口が9534万人なので糖尿病有病率は11.20%となり、WHO標準値の7.93を大きく上回る。
戦後の経済成長期以後日本の糖尿病人口が急増したことから、やはり欧米型の食生活は日本人に合わないのではないかと考えられている。
現在では、ある遺伝子に変異があると糖尿病になりやすいということが明らかになっており、これはアジア人種の方が欧米人種より高い確率で保有しているとのことだ。
そして日本人では4人に1人が保有している。
この理由として考えられるのは、欧米では1万年前から肉食文化が浸透しており、この遺伝子変異を有する人は既に淘汰されたのではないかと考えられている。
つまり1万年後には日本人の糖尿病も自然に減少する可能性があるので、気の長い方はそれを期待されるのも良いかと思う。
ちなみに健診で血糖値に異常が見つかった人は10年以内に43%が糖尿病になるという統計もあるので、現実的には早めに生活習慣を改善した方が良いでしょう。
ところでなかなか体重コントロールに成功できない人が決まって言う台詞に「水飲んでも太るねん」というものがある。
しかし0カロリーの水を飲んで体重が増加することは絶対にない。あるとすれば夢遊病で無意識に何かを食べているのか、光合成でもしているのだろう。
摂取カロリーを消費カロリーより抑えれば確実に体重は減る。
消費カロリーは肉体的運動・基礎代謝・頭脳労働などであり、筋量を増やすことにより基礎代謝量を増やすことができる。
基礎代謝は運動時以外でもカロリーを消費し続ける。
メタボリック症候群よりは格段に知名度が低いが、ロコモーティブ症候群防止のためにも、効率の良い体重コントロールのためにも、できる範囲で筋量を増加することをお勧めする。
ただし生卵はお勧めしない。
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