武田病院グループ:保険・医療・福祉のトータルケアを提供する京都の病院

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たけだ通信 No.111(3月発行)

武田病院グループ理事長 武田隆久

高齢者人口のピークとその先にある人口減 医療・介護制度の構造変化に流されず 確として地域を支えるあり方を追求する

photo_rijicho.jpg【トピックス】
武田病院グループ 理事長
 武田 隆久

連日のように語られる社会保障費の高騰。なかでも高齢化で増大する医療・介護の費用にどう対応するかが大きな課題となっています。いま、国も地方も病院(病床)の再配分と地域包括ケアシステムの確立にやっきになっていますが、それ以降の人口予測を見れば、また新たな再配分に追われることは間違いないでしょう。
今回は、人口密集部から地方部まで医療・介護を提供する武田病院グループの立場から、これからの地域に求められる法人のあり方についてお話しを致します。

進行する過疎高齢化に備え地方を支えるネットワークを

 1月の月報(総務省統計局)によると日本の総人口は1億2686万人で、前年に比べ17万人も減少しています。この数値は国立社会保障・人口問題研究所が2013年にまとめた将来推計とほぼ合致し、このまま進めば2025年時点で740万人が減少(2010年基準)、2040年にはさらに加えて1338万人が減少する恐れがあります。

 京都府を見れば2040年時点での人口減はおよそ41万人。減少率はほぼ全国平均値ですが、高齢者人口は増加を続け、2010年ベースで考えると実に31・2%も上昇し、80万9000人となることが推計されています。中心部に人が集まり、地方部の人口減・高齢化が加速することは予想に難くないため、支え手の人口が減少する地方部のセーフティネットをどう維持していくかが大きな課題だと感じます。実際、京都府南端の木津川市、北部の宮津市でサービス提供する当グループでは既に対応している問題であり、今後の深刻化を前に隣接地域の関係者とも協力して支え手のネットワークを強化していく考えです。

連携重視の医療へ豊かな人間性をかん養

111_rijicho_1.jpg こうした人口変化を前提とし、国全体の医療等提供体制を維持するために進められているのが「地域医療構想」と「地域包括ケアシステムの推進」です。地域医療構想は、端的に言えば医療機関(病床)の機能を需要に合ったバランスに再配分する計画です。これまで、生命の危機に対応する「高度急性期医療」を提供する医療機関(病床)が多い傾向にあったのですが、これを徐々に減少させて、その後の医療を担う「急性期」「回復期」「療養・在宅」を適正量にするというものです。

単純に再配分すれば良いというものではなく、同時に〝効率化〞を進めることで、医療費のスリム化を図ろうとしています。とくに、「療養・在宅」については、従来、医療機関が担っていた範囲を介護・福祉の領域まで広げることが必要になってくるでしょう。これは医療機関だけでなく、自治体関係者や民生委員の方など、様々な関係者が連携して支える「地域包括ケアシステム」の構築にも関わってきます。

 こうなると、人対人の関係性が極めて重要となってきます。これまで医療機関が重視してきた「資格における技能」や「学術的な専門性」だけでなく、コミュニケーション力や人としての感受性など「豊かな人間性」が欠かせないのは言うまでもありません。

 冒頭でも申しましたが、国の施策はいささか「施設・資格者」の配置と「費用の帳尻」を合わせることに目が奪われ過ぎているように感じます。計画においても、人間性を養うことや、人を大切にする視点がなければ画餅に終わることになりかねません。私どもは注意を喚起し、また自らも血が通う組織づくりにまい進したいと考えております。

継ぎ目のない支援を実現する認知症総合センターを開設

医療・介護の課題は将来に備えることばかりではありません。いま目の前でお困りの方に、どう対応していくか、医療者としての基本を大切にしなくてはなりません。
 時には制度そのものが「障壁」となってしまい、個々の医療や介護サービスが上手くつながらないこともあります。

111_rijicho_2.jpg例えば、高齢になって認知症を発症するケースでは、初期の発見と対応、医療的な治療、在宅での支援、施設サービスでの支援といった様々な支えが考えられます。一見、これらは独立したステージのように分類できますが、患者さんの暮らしや症状(お困りごと)の視点に立つとステージの区切れなどは存在しません。  そこで当グループでは、Ⅰ医療支援機能、Ⅱ初期支援機能、Ⅲ在宅支援機能、Ⅳ施設機能を一体的に提供する「認知症総合センター」を府内初の取り組みとして行います。  開設するのは宇治市にあるヴィラ鳳凰(社会福祉法人悠仁福祉会)で、既存の特別養護老人ホームも活用します。特養は認知症の方優先へと方針をシフトし、認知症外来・訪問診療と常設型の認知症カフェを備えた新施設を開設します。2018年度には、認知症対応型デイサービスやグループホームの開設も予定しています。この4つの機能と、隣接するヴィラ鳳凰、宇治武田病院が有機的につながることで、継ぎ目のない支援ができるものと期待しています。

乳腺クリニック児玉外科武田病院グループへ

111_rijicho_3.jpg また、医療の質・量を高めることも重要です。このたび、乳腺クリニック児玉外科が当グループに加わりました。全 国で初めて乳腺専門の医療機関として京都に誕生し、乳房温存手術の歴史を切り開くなど、日本の乳がん治療をリードしてきたクリニックです。乳がんは術後も長期にわたりチェックが必要な疾患です。長いお付き合いになりますの で、温もりを感じるアットホームな施設で健康管理をさせて頂く考えです。

今後も当グループでは、増大する様々 な医療ニーズに応えるとともに、地域の皆さんのパートナーとして一緒に歩んでまいります。ご指導、ご鞭撻を宜しくお願い致します。

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