お薬との正しい付き合い方を理解していただくために、また、日々進化するお薬のことを知っていただくために、「くすりのお話し」をさせていただきます。
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。
【抗菌薬とは】
昨年のノーベル生理学・医学賞受賞者大村智博士は日本の土壌中の放線菌が産生するエバーメクチンという物質を見出し、その後イベルメクチンという薬剤が誕生しました。これによって、1億人以上もの人たちが風土病「オンコセルカ症」の重症化による失明の危機から免れました。このように細菌が産生する物質を薬にしたものが抗生物質です。近年は人工的につくる事ができるようになったため、細菌に作用する薬剤の事を一般的に「抗菌薬」とよんでいます。
【最近の話題】
抗菌薬の不適切な使用を背景に薬剤耐性菌が世界的に増加する一方、新たな抗菌薬開発が減少傾向にあり国際社会でも大きな問題になっています。また、スーパー耐性菌(コリスチンでも制御不能)について5月26日に米疾病管理予防センターが国内初の感染症例を報告しています。昨年5月にはWHO(世界保健機構)による薬剤耐性(AMR)グローバルアクションプランが設定されていましたが、伊勢志摩G7で「国際協力」を追加強調する首脳宣言をもりこんでいます。我が国の目標には「抗菌薬使用量を2020年までに3分の2に削減」などなど、が発表されています。
【いったいどのように薬剤耐性菌ができるのでしょうか】
主に
1.細菌自身が抗菌薬を無効化する酵素を作る
2.病原菌側がその部位の構造を変化させ薬剤を作用させなくなる
3.薬剤を細胞外に排出するポンプを獲得する
の3つに分けられます。最もよく見られる耐性機構は1ですが、ウィルスなどの場合は2の機構が多いです。
【耐性菌が発生しやすい環境とは】
1. 抗菌薬の低濃度使用
2. 薬剤の中断(副作用回避以外での)
3. 長期間使用
などです。このような環境下は細菌、ウィルスが耐性獲得のための学習をする機会を与えているということにほかなりません。
【では私たち患者側ができることはあるのでしょうか】
WHO「抗菌薬啓発週間」(2015年11月)で呼びかけている「4原則」が以下となっています。
1.求めない(買わない)
2.飲むならきちんと
3.ひとからもらわない
4.ひとにあげない
いたってシンプルです。
【最後に】
薬は正しく使いましょう。そのためにはかかりつけ薬局をもち、薬剤師を活用していただければと思います。
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