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くすりのお話し

お薬との正しい付き合い方を理解していただくために、また、日々進化するお薬のことを知っていただくために、「くすりのお話し」をさせていただきます。

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

2016.03.01 認知症の薬について/たけだ通信109号より

十条武田リハビリテーション病院
薬局長代理
大久保 幸子

109_medicine.jpg 厚生労働省のホームページによると、昔の数値ですが、2012年度の時点で65歳以上の高齢者の方で7人に1人程度が認知症と言われています。また認知症の前段階のMCI(正常と認知症の中間ともいえる状態のことで日常生活への影響はほとんどなく、認知症とは診断できない)のうち年間で10~15%が認知症に移行するとされています。

 認知症は、加齢によるもの忘れとは違います。例えば、食事のメニューを思い出せないのは、物忘れであり、食事したこと自体を覚えていないのは認知症の疑いがあります。また、身だしなみをかまわなくなり、自分一人での着替えもうまくいかなくなったりします。

 認知症にはいくつかの種類がありますが、主なものとして、アルツハイマー型認知症(最も多いパターン。記憶障害(もの忘れ)から始まる場合が多く、他の主な症状としては、段取りが立てられない、気候に合った服が選べない、薬の管理ができないなど)、脳血管型認知症(脳梗塞や脳出血などによって神経細胞のネットワークがこわれてしまう)、レビー小体型認知症(症状としては、幻想や筋肉のこわばりがみられます)などがあります。このうち約50~60%はアルツハイマー型認知症、約15~20%は脳血管型認知症とレビー小体認知症によるものとされています。

 認知症の中で割合の多い、アルツハイマー型認知症は脳内のアセチルコリンという神経伝達物質が減少しているのではと考えられています。1999年には初めて飲み薬が発売されました。アセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)の働きを妨げて、脳内アセチルコリン濃度を高め、アルツハイマー型認知症における症状の進行を抑制する治療薬です。早めに服用すると症状の進行を遅らせることが期待できます。

 2011年には同様の作用がある、飲み薬と貼り薬が発売されました。どの薬も少ない量から始めて少しずつ量を増やしていきます。貼り薬は飲みこみがうまくできない高齢の方には適した薬です。1日1回貼りかえます。貼る場所は背中から肩、胸や腕です。皮膚への刺激を避けるため同じところへ貼らないようにしてください。

 また、アセチルコリンとは別に脳の中で神経伝達物質として記憶などの働きにかかわるグルタミン酸は過剰すぎると神経細胞がうまく働かなくなるといわれています。これを改善する薬も2011年に飲み薬として発売されました。この薬も少しづつ増やしていきます。

 レビー小体型認知症では大脳の中に『レビー小体』という物質が広く見られます。幻視とは実際に見えないものが本人にはありありと見える症状です。また、身体の筋肉や関節が固くなり、転倒しやすくなります。

 認知症の薬の管理はご本人よりご家族が適しています。以前に比べて薬の選択肢も昔より少し増えてきました。かかりつけの医療機関はもちろんですが、不安に思われるときは地域包括支援センター、家族の会もありますので、ご相談ください。

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