アスニー京都で開催される、武田病院グループのスタッフによる健康講座です。
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。
医仁会武田総合病院
皮膚科 部長
松井 美萌 氏
■アトピー性皮膚炎
●アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎は、特別な皮膚のトラブルではなく、どちらかといえば日常診療でよく見る皮膚の状態です。
しかし悩んでおられる方、反対に無関心なまま掻破を繰り返している方、治療について正確な情報を持っておられない方もおられます。
当院では2015年3月よりアトピー外来を設け、丁寧な日常ケアなどの解説も含めて診療にあたっています。アトピー性皮膚炎とは、日本皮膚科学会の定義によると、「増悪と寛解を繰り返す掻痒のある湿疹を主病変とする疾患で、患者の多くはアトピー素因を持つ」となっています。つまり良くなったり、悪くなったりを繰り返す、慢性の湿疹の状態です。
●原因は?
アトピー性皮膚炎の患者さんの3割程度で、皮膚のバリアを担う保湿に関する因子が遺伝的に少ないことが知られています。
皮膚のバリアがダメージを受けており、乾燥肌の状態であることが特徴です。皮膚のバリアの異常がある皮膚を、掻破することから発したアレルギー反応が進むと、喘息や食物アレルギーなども生じやすくなることも知られています。そのため皮膚の保湿ケアがとても重要です。
●症状は?
全身の乾燥肌、かゆみからの掻破、掻破痕を認めます。
両肘や膝の屈側、臀部や下腿、手指にも掻痒感や掻破痕、皮膚の亀裂などを生じやすいです。
顔面では、眼瞼や、耳のつけね、口唇の乾燥や掻痒が著明なことが多いです。大人では頸部の乾燥、掻痒、女性では乳頭部、男性では陰嚢に掻破痕を認めることもあります。
●治療は?
湿疹を生じている箇所にはステロイド外用剤を塗布します。
ステロイド外用剤は5つのランクに分かれており、からだの部位でも吸収され易さに差があります。症状や皮膚の部位によって処方される薬剤が変わります。どの薬剤を、どの部位に、どの程度の量・症状がどのようになるまで塗布すれば良いのか知ることが大切です。
湿疹が著明でない箇所や湿疹が改善しても皮膚の保湿を行うことが必要です。
さらに抗ヒスタミン薬を服用いただき、掻痒感を抑えることで効果的に治療を行うことが出来ます。
タクロリムス軟膏という、ステロイド軟膏とは異なる機序で炎症を抑える外用剤もあります。ひりひりとした刺激感があるので、使い方に注意が必要です。
●生活上の注意
皮膚を必要以上に刺激しないことが必須です。
入浴時の注意として、ボディソープ、ボディタオル、アカスリタオルなどはやめたほうがよいでしょう。石鹸を泡だてて、泡でやさしく洗浄する程度で良いと思われます。
入浴後には、処方されたお薬をすぐに塗布し、皮膚炎がないところも保湿剤を塗布していくことが必要です。
皮膚に直接触れるものについては、「皮膚を刺激しないか?」の観点で選びましょう。下着、ニット、ヘアケア製品、化粧品(クレンジング製品、リップクリーム)、ヘアスタイル、手指のアルコール消毒などには特に気を付けましょう。規則正しい生活(睡眠、食事など)をおすすめします。
●合併症
皮膚炎が著明で皮膚のバリアの働きが不十分であると、二次的に細菌感染やウイルス感染などを生じることがあります。
アトピー性皮膚炎を持っておられて、いつもと異なる皮膚のトラブルを合併した場合、早急に皮膚科医師の診察を受けましょう。
眼の周囲に皮膚炎が著明な方は、結膜炎や白内障、網膜の異常などを来すこともあるので、定期的に皮膚科医師の診察を受けることが必要です。
■帯状疱疹
水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化で起こる皮膚疾患が帯状疱疹です。
子どもの時に罹患した、水痘(水ぼうそう)のウイルスは、罹患後には脊髄内に潜んでいますが、高齢の方、体力が低下した方などに、皮膚と神経を損傷しながら再度活性化してきます。
皮膚の症状は神経支配に沿って、身体の片側に水疱の集簇として出現します。皮膚の水疱が出現する前から、その箇所の痛みを自覚することが知られています。抗ウイルス剤による治療が必要となりますので、かかりつけ医や皮膚科をすぐに受診しましょう。
帯状疱疹後神経痛という痛みが残ることがある点、抗ウイルス薬の服用も年齢等で考慮が必要であること、帯状疱疹の発症している部位や重篤度によってさらに合併症を認めることがありますので、できれば皮膚科専門医を受診して適切な治療を開始していただくことが大切です。
■水虫(白癬)
白癬菌という真菌、つまりカビが皮膚や爪に感染した状態です。足白癬、体部白癬、爪白癬などがよく見られます。
まずは白癬による症状なのか否か、正確に診断をつけることが必要です。皮膚科では顕微鏡を用いてすぐにその場で白癬の有無を確認できます。
自己判断でお薬を開始すると、診断がつきにくくなり治療に難渋することがあります。白癬のある足指を掻破して細菌感染を生じるケースや、爪白癬の肥厚した爪によって周囲の皮膚を傷つけるケースなど、白癬を治療していない為に、二次的に深刻な状態を生じることがあるので注意を要します。
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