アスニー京都で開催される、武田病院グループのスタッフによる健康講座です。
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。
医仁会武田総合病院
栄養科 管理栄養士
岡松 麻衣 先生
■認知症の症状
●中核症状
新しいことを覚えられない記憶障害、現在の年月や時刻、自分の居場所がわからなくなる見当識障害、些細な変化やいつもと違う出来事で混乱をしてしまう理解・判断力の障害、物事をスムーズに進められない実行機能障害、周りの人が予測しない思いがけない感情の反応を示す感情表現の変化があります。
●行動心理症状
例えば、能力の低下を自覚して元気がなくなったり引っ込み思案になったりします。自信を失って、全てが面倒になってしまい、自分のしまい忘れなのに他人に物を取られたように思ったり、娘が家の財産を狙ってるなどオーバーな訴えや行動がちぐはぐになって徘徊をするようになります。
■生活習慣病と認知機能の低下の影響
高血圧や糖尿病、脂質異常症、いわゆる生活習慣病を持っていると、認知機能低下やアルツハイマー病のリスクがかなり高くなるといわれています。ですが生活習慣病を改善していくことで認知機能低下を防ぐこともできるので、生活習慣を見直しましょう。
■食生活の見直し
食品は、主食、主菜、副菜が揃っていると良いと聞かれると思います。主食は、炭水化物が多く含まれているごはんやパン、麺類です。主菜は、タンパク質が多く含まれている肉や魚、卵、豆腐などです。副菜は基本的に野菜料理のことで、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。食品の三大栄養素とは、炭水化物、タンパク質、脂質で、脂質はマヨネーズやごま油、サラダ油のことを差します。食事の基本は、主食が1日3杯、主菜は1日3皿、副菜は1日5皿分ぐらいと、果物や牛乳などを取り入れるとバランスがいいです。例えば、麺類は塩分が多いので、野菜炒めなどを添えたり、つゆを最後まで飲み干さないようにするなど工夫してみてください。
■血糖値を上げない食事
血糖値を急激に上げる食品は、炭水化物を多く含んだ食品です。ですが食べてすぐにまた下るのが特徴で、おなかが空きやすいです。タンパク質や脂質はそれほど上がりませんが、腹持ちはいいといわれています。一度に早食いをせず、ゆっくり食べることが大事です。サラダや野菜など食物繊維を先に食べる方が血糖値が徐々に上がっていくので良いといわれています。特に、わかめや昆布、オクラ、こんにゃくなどに含まれる水溶性食物繊維は、腸管内の余分なブドウ糖を絡め取って排出する要素がありますので、積極的に食べてください。また、低GI食品というのを耳にしたことがあると思います。これは血糖値が上がりにくい食品を示していて、主食でいうとはるさめや小麦、全粒粉のパン、玄米などです。野菜ではレタスやキノコ類や大根、ピーマンやブロッコリーを示しています。ほかにもナッツ類や、牛乳、ヨーグルト、リンゴやイチゴなどです。タンパク質と脂は消化に時間がかかるため、一緒に食べると血糖値の急上昇を抑えてくれます。とくに脂は、動物性脂肪のバターや肉類に含まれている飽和脂肪酸よりも、魚やオリーブオイルなどに多く含まれる不飽和脂肪酸がよいとされており、動脈硬化を防ぐといわれています。また、塩分の取りすぎはよくないので、例えば味噌汁なら具だくさんにして汁の量を少なくすることが大事です。また、塩や醤油の代わりにショウガや唐辛子、カレー粉などのスパイスで味付けするなど工夫をしてみてください。かまぼこや魚の開きなど加工食品は塩分が多いといわれていますので、食べすぎないよう心がけてください。
■サルコペニア
サルコペニアは、加齢によって筋肉が減ってきてしまう病気で、筋肉が落ちることによって背中が曲がったり、前かがみになったり、身長が低くなってしまうといわれています。筋肉が落ちてくることによって、運動や食欲が低下し、転倒や寝たきりの状態になりやすくなり、認知症にもなりやすいことがわかってきています。さらに、最近ではサルコペニア肥満が注目されていて、BMI25以上で肥満をさしているのに筋肉が減ってきている状態の方が、生活習慣病になりやすいというのがわかってきています。サルコペニアを防ぐには食事バランスと運動が大事です。
■認知症と食事の関係
最近の研究で、認知症にはヨーロッパの地中海式の食事が良いということがわかってきました。ヨーロッパの方は、パン食の穀類とオリーブオイルをよく使う料理が多いですし、緑黄色野菜や果物、地中海の魚をよく食べますし、抗酸化ポリフェノールが多いとされる赤ワインをよく飲みます。こういった食事が実はアルツハイマー病の進行を遅らせるということがわかりました。主食と主菜、副菜をバランスよくとっていること、さらに魚の油とオリーブオイルを一緒にとることで、生活習慣病だけではなく認知症を遅らせているのです。認知症が起きにくい食事は、牛乳や乳製品、大豆や大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、海藻類、果物、果物100%のジュース、いも類、魚、卵です。逆に減らすといい物は、お米とお酒です。全く食べないということではなく食べる量を少し減らす、お酒も飲みすぎない程度にすることで認知症を予防するといわれています。ぜひ、バランスの取れた食事に、和食だけでなく和食+オリーブオイルとか青魚の油をとってみてください。
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