武田病院グループは、患者さんの体に負担の少ない最新・最先端の治療を目指して、研鑽を続けています。 「めでぃかるとぴっく」では、最近話題の病気や治療法など、さまざまなトピックに焦点を当て、武田病院グループの各科の先生にお話を伺います。
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。
武田病院 整形外科副部長
牧昌弘 氏
■足底腱膜炎とは?
足の裏には、足底腱膜(そくていけんまく)と呼ばれる膜のような腱が、かかとの骨から足指の付け根まで覆っています。足底腱膜炎(そくていけんまくえん)は、繰り返される物理的ストレスを受けた足底腱膜に炎症が起こる障害です。陸上競技などのスポーツ選手やジョギングなどの愛好家に発症することが多いのですが、歩き回る仕事や立ち仕事に従事する人にも発症します。
■原因は?
歩行時に床からの繰り返しストレス(衝撃)を受けることで足底腱膜のかかとの付着部に炎症が生じます。また歩くとき足の土踏まずは浮き沈みの動作を繰り返しますが、この動作で足底腱膜に伸び縮みのストレス(牽引)が生じ、腱膜付着部の炎症を引き起こすのです。(図)
また、へん平足、甲高の足などの変形を持った足や肥満は足底腱膜炎の危険因子とされています。
■症状について
朝、歩きはじめにかかとの裏が痛いのが典型的な症状です。ひどくなってくると、長時間の歩行や立位でも痛みが強くなります。
■診断方法は?
典型的な症状(歩き始めの痛み)と足底腱膜の付着部である踵に圧痛(押した時の痛み)があれば診断できます。鑑別疾患として関節リウマチなどの膠原病、腰椎由来の坐骨神経痛などの末梢神経障害は鑑別が難しく、しばしば誤診されることがあります。
■治療について
初期の段階ではストレッチと外用剤使用を指導します。足底腱膜とアキレス腱のストレッチを積極的に、毎日行っていただきます。
足底腱膜のストレッチの具体的な取り組みは、足の指を両手で手前へ引き付け、足底腱膜を伸ばした姿勢を20〜30秒維持します(1セット)。このストレッチ3セットを1日3回(朝・昼・夜)行います。
アキレス腱のストレッチは、立った状態で身体の後ろへ片足ずつ踏み込んで膝を前に倒していき、ふくらはぎを伸ばした姿勢を20?30秒維持します(1セット)。このストレッチ3セットを1日3回(朝・昼・夜)行います。それでも痛みや症状が続く場合には、踵にクッション性をもたせる装具(足底板)を装着したり、ステロイド注射を行います。
これらの保存治療で約8割の方が改善すると言われています。残り2割の難治性に対して当院では体外衝撃波治療もしくは手術治療を行っています。手術治療とは内視鏡を使って足底腱膜の一部を切離します。
国内でも数少ない体外衝撃波治療について
この治療は、ドイツで約20年前から報告されている治療法です。体外衝撃波除痛装置(写真)が医療機器として厚労省に認可されたのは2008年であり、日本では比較的新しい治療法です。2012年に足底腱膜炎に対してのみ保険適応となりましたが、体外衝撃波治療の適応は足底腱膜炎だけでなく、テニス肘・膝蓋腱炎・アキレス腱炎などの四肢の腱の炎症に適応があります。作用メカニズムについては、過敏になった神経終末の破壊および組織修復であると言われています。
当院では、全国に数十台しかない体外衝撃波除痛装置を2014年7月から導入しました。京都府内でも導入している施設は2カ所とまだ少ないです。これまで、さまざまな治療法を試したが痛みがなくならないという人に、検討いただきたい治療法の一つです。日本ではあまり知られていない治療法ですが、ヨーロッパを中心に普及し、全世界で有効で安全な治療法としてすでに使用されています。薬剤を使用しないため、ドーピングの心配もなく、アスリートには最適な治療法です。
■我慢せずに受診を!
難治性に陥りやすい人は、痛みを我慢して激しい運動を続ける。無理をしてしまうことが多いようです。この治療法が、整形外科医の間でもあまり知られていないこともあって、湿布だけで治療を終えてしまわれる患者さんもありますので、当院での診察をお勧めします。受診された方の中には、ストレッチのことも、「初めて知った」と驚く方もおられました。
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