武田病院グループは、患者さんの体に負担の少ない最新・最先端の治療を目指して、研鑽を続けています。 「めでぃかるとぴっく」では、最近話題の病気や治療法など、さまざまなトピックに焦点を当て、武田病院グループの各科の先生にお話を伺います。
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。
十条武田リハビリテーション病院 副院長・人工関節センター長
真多 俊博 先生
■ 人工関節置換術とは
変形性関節症と呼ばれる膝や股関節、肩の関節の症状は、加齢変化によって起こることが多いのです。関節の破壊や関節リウマチによる変性によって、関節の動きの制限や痛み、場合によっては脚長の短縮のため、歩行能力の低下や、手、肩、肘の動きの悪化が生じます。その改善のために人工関節置換術を実施します。
人工関節は、特殊な金属のチタン、セラミックや硬いプラスチック(ポリエチレン)などが素材として選ばれて作られています。人工関節の動く部分は、主にセラミックとポリエチレン、金属とポリエチレンの2種類ですが、最近では金属同士のものも摺動面(こすれあう面)に用いられるようになっています。
患者さんの関節の状態によって、ベストの素材や組み合わせを診断しますが、現在の人工関節はすべて、15年~20年間は再治療の必要はありません。
■ 寝たきり要因の変形性股関節症・変形性膝関節症
わが国では、膝の人工関節治療で年間約12~13万人、股関節は年間約8~9万人に対して行われています。特に、股関節は身体の中の最も大きな関節で、体重を支えています。健康な股関節ではねじったりしても、関節が外れたり、痛みなく歩くことができるのですが、股関節に問題が生じると、動くと痛むようになり、ひどい場合には立っているだけでも痛むようにもなります。
■ 治療法
人工関節の手術は、ベアリングを埋め込むのですが、骨の中にしっかりと機械を固定させることが大切になります。歯の治療で、歯がぐらつくと冷たいものがしみたり、かみ切れないようになるのと同じことが起こってしまいます。人工股関節の固定方法として、接着剤(骨セメント)を用いる方法と、用いない方法(セメントレス)があります。現在は、セメントレスの表面に特殊な加工がされ、手術後、骨が入り込んで固定される方法が広がりつつあります。
■ 手術により改善へ福音
昨年、当院へ赴任後から50例の人工関節手術を行い、前任の武田病院グループを含めた全ての臨床手術件数は600例以上になります。最高齢の方では88歳(女性)の人工股関節置換術を行い、膝の手術では96歳の方がおられます。関節の異常に悩む患者さんにとっては確かな福音となる治療法と考えます。治療日数は、術後翌日から立位訓練、2週間で抜糸し、残りの1週間は階段昇降などで総合リハビリ、3週間で退院という方針(クリニカルパス)で実施しています。
ご高齢の方には関節の痛みを我慢される場合が多いようです。関節の痛みの対処療法のために整体院などで毎週治療を受けている方もあります。ご自分の年齢を考えていただき、男性で80歳、女性で85歳の平均寿命は今後も延びることから、旅行や趣味、スポーツへの取り組みなど、人生をさらに有意義に過ごすためにも我慢をすることなく、治療を選んでいただくことが何よりかと思います。
■ クリーンルーム
特に人工関節の手術は、完全に清潔な環境の中で行わないといけません。当院の手術室は、空気中の塵埃をろ過できるフィルターを設備した部屋になっています。フィルターを通した空気が、室内を平行に流れる「水平走流式」のクリーンルームです。
また、術者やサポートの看護師が咳をしたり、髪の毛が落ちる、衣服の線維が飛ぶといったことが無いよう、「呼気・排気装置」を付けた全身を覆う手術着を用い、感染などが100%起こらない設備を整えています。
■ リハビリと運動
十条武田リハビリテーション病院はリハビリの専門病院です。急性期、亜急性期、介護の必要な方々のリハビリをはじめ、言語障害を含めた全てのセラピストやスタッフもおります。人工関節の手術後すぐにリハビリに取り組み、早期退院、QOLの改善や日常生活へ復帰していただいています。また、手術に入る前の術前リハビリも行います。理学療法士や作業療法士が患者さんと対面し、手術時での身体的負担、対応などをくわしく説明しています。
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