武田病院グループ:保険・医療・福祉のトータルケアを提供する京都の病院

  1. トップ
  2.   >  広報・読み物
  3.   >  健康のために
  4.   >  健康相談Q&A
  5.   >  外反母趾治療について・前立腺がんについて/たけだ通信105号より

健康相談Q&A

このコーナーでは、世間の関心が高い疾患を皆様にわかりやすくご紹介します。 読者の皆様からのご質問に答えていきます。

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

2014.09.11 外反母趾治療について・前立腺がんについて/たけだ通信105号より

ハイヒールはやっぱり外反母趾に悪い?

外反母趾の原因には内的因子と外的因子があります。内的因子とは家族内発症であり、幼少期から外反母趾を発症しているケースです。そして残念ながら外的因子とは先の細い靴やハイヒールであると言われています。しかし古代エジプトのクレオパトラの時代から女性にとってハイヒールはファッションとして欠かせないものであることも事実です。そこでヒールの高さに注意していただきたいのです。ヒールの高さが4cmを超えると重心がつま先に集中してしまうことが分かっています。したがって高さが4cm以下のハイヒールを履くことをお勧めします。

外反母趾の保存治療は?

体操治療と装具治療があります。体操治療では足の指を開いたり閉じたりするグーパー体操が有効です。
外反母趾の変形が進むと足の指はどんどん固くなり、靴ずれや足裏にマメができやすくなります。グーパー体操(写真)を行うことで足の指の柔軟性と筋力を獲得し、症状の改善と変形進行の予防が期待できます。体操の回数は100~200回/日ぐらい行うことをお勧めします。装具治療では母趾と第2 趾との間に挟む装具と靴の中に入れる足底板の組み合わせが有効です。外反母趾は足幅が広くなっており、母趾と小趾が靴に当たりやすくなっています。足底板は広くなった足幅を細くしてくれます。また外反母趾の方は足幅に合わせて靴のサイズを選ぶためサイズの大きい靴を履かれていることが多いですが、足底板の効果を最大限に引き出すためには足のサイズに合った靴選びが大切です。

外反母趾の手術治療は?

保存治療でも疼痛が改善せず、日常生活に支障がある場合が手術の適応です。軽症の場合と重症の場合で手術方法が違います。軽症の外反母趾の手術では手術後1 週間の副木固定を行います。その後歩行訓練を行います。重症の外反母趾の手術では手術後3週間のギプス固定を行います。ギプス固定中は踵にゴムを付けて歩行が可能です。手術後も軟部組織が安定するまでの期間は変形の再発予防のために矯正装具を装着します。両足の同時手術も可能です。

前立腺がんの早期発見は

前立腺がんは昨今日本でも増加してきている重要な疾患ですが、PSA(前立腺特異抗原)という血液検査でがんが無さそうかはかなりの精度で診断できます。心配な方は病院等で検査を受けていただければと思います。検査の結果がんがあるかもしれないと言われた場合はより精密な検査が必要になります。しかしながら前立腺がんは高齢者(70歳以降)に多く、また比較的進行のゆっくりしたがんです。加えて辛い副作用の多くない薬物療法(ホルモン療法)で、仮に進行した状態でも5-10年ぐらいは長生きできます。健康状態にもよりますが80歳を超えた方についてはあまり心配しすぎない方が良いかもしれません。泌尿器科でアドバイスを受けてください。

前立腺がんと言われたら

前立腺がんは、進行していても早期でも、ホルモン療法が効きます。根治する事は出来ませんが5-10年は病状を抑える事が出来ます。一方ごく早期の場合、経過を慎重に診ていく事で十分ながんも存在します。ただ多くの早期がんでは根治療法を勧めます。根治療法には手術療法と放射線療法があります。放射線療法では欧米では歴史が古く手術と同程度の効果が期待できます。前立腺に放射線源となる粒をたくさん埋め込むため、入院・麻酔が必要です。近年では体外から放射線を当てる機械が改良され、同等の効果が得られると考えられています。武田病院グループでは最新鋭の治療機械を宇治武田病院に設置、治療しています。通院で治療できる事、他の器械に比べ通院回数も減らせる事が特徴です。一方、手術療法は、今や腹腔鏡手術が主流で、いわゆるおなかを切る手術は特殊な場合以外は無くなり、患者さんの身体的な負担が減っています。医仁会では京都府で最初の認定をいただき、件数を重ねてきましたが、過去5年以上開腹が必要になった事がありません。最近ではガイドラインの改定に伴い悪性度の高いがん(D'amico分類等)ではリンパ節廓清も行っています。

最近ではロボット手術が良さそうですが

手術用ロボット(ダヴィンチ)は1990年代に開発され、アメリカでは前立腺全摘の多くはロボット手術になっています。
日本でも一昨年に認可され、現在まで200台近くが導入され一躍ロボット手術先進国になっています。アメリカでは手術時間が短いなどのメリットが強調されています。確かに開腹手術よりは患者さんの身体的負担が少ないですが、腹腔鏡手術と比べ患者さんにメリットがあるという報告で信頼できるものは国内にはありません。医師側から見ると手術は楽になり、術者にはメリットがあります。よく見えるとか血管を切っても出血しないとか特徴はありますが、ロボットに起因するのではなく、内視鏡の性能や特殊な手術体位によるもので腹腔鏡手術でも同様な事が可能です。特殊な体位というのは頭を下に下げた状態で手術する事で、3時間以上経過すると頭に血が上り様々な合併症が危惧され特に緑内障の患者では無理と言われています。だから腹腔鏡手術ではこのような体位はとりません。傷も腹腔鏡手術では1.5cm が3個、1.0cm が1~2 個で行いますが、ロボットでは1.5cm が5つ、1.0cmが1つと傷が大きく多いです。それ以外に小腸損傷や内視鏡による熱損傷など腹腔鏡では考えられない合併症があります。ロボット手術の安全性を如何に腹腔鏡手術に近づけるかが現状で、腹腔鏡手術にくらべ患者さんにとってのメリットは見いだせていません。我々はより進化した次世代の手術ロボットを期待しています。
(注:腹腔鏡とは、厳密には同種の後腹膜鏡ですが、判りやすくするため通称として腹腔鏡という語を用いています。)

前の記事 一覧を見る 次の記事

Copyright © 2015 Takeda Hospital Group. All rights reserved.