アスニー京都で開催される、武田病院グループのスタッフによる健康講座です。
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。
花粉症の飲み薬について
医仁会武田総合病院 薬局長 馬瀬 久宜 氏
■アレルギー性鼻炎とは
アレルギーによってくしゃみ、鼻みず、鼻づまりなどの症状が起こる病気です。主に季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)と通年性アレルギー性鼻炎(ハウスダストなど)に分けられます。これらの原因物質を吸い込むことで、鼻の粘膜にある肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンが出てきてくしゃみや鼻みず、鼻づまりなどを起こします。
■花粉症の初期療法について
実際の花粉シーズンが本格的に始まる前から予防的に花粉症の薬を飲み始めるのが初期療法です。花粉が飛散する前に治療を開始した人の方が、飛散した後に治療を開始した人に比べて、症状の出方に差が出ます。花粉は観測されてから飛散するまでにタイムラグがあります。観測日から花粉の飛散開始は平均25日ぐらいと言われていますので、症状が出る前から薬を飲み始めるとシーズン中を楽に過ごすことができます。
花粉症と風邪との見分け方は、風邪は1週間ほどでよくなったり、熱が出ることがあったり、せきや痰、のどの痛みがあったりします。一方花粉症は、シーズン中または一年中続いたり、発熱はほとんどなく、目のかゆみや、充血が見られるといった違いがあります。花粉症の予防対策としては、マスクやメガネをすること、気象情報のチェック、服の花粉をよく払う、洗顔、うがい、掃除などがあります。
■主な治療薬
花粉症で使われる主な治療薬は、眠気などの副作用が軽減された第二世代抗ヒスタミン薬が主流で、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりを全般的に抑えます。鼻づまりがひどい場合は、抗ロイコトリエン薬や、鼻噴霧用ステロイド薬を使います。症状が比較的軽い場合、遊離抑制剤飲み薬、鼻はステロイド剤を噴射したり、目のかゆみには点眼薬を使います。また、ここ最近では、抗ヒスタミン薬と血管を収縮させる働きがあるα交感神経刺激薬がくしゃみ、鼻みず、鼻づまりに対して有効で、これを配合した薬が出てきています。
予防的な治療として、抗ヒスタミン薬、遊離抑制薬、抗ロイコトリエン薬を飲んで、シーズン前に供えます。本格的な花粉シーズンが到来したら、症状に応じて十分な対策を取ることが大切です。ただ、抗ヒスタミン薬の中には、脳へ移行し、眠気や、知らず知らずのうちに運転やスポーツ、勉強などの集中力や判断力を低下させる状態(インペアード・パフォーマンス)を起こすものがあります。インペアード・パフォーマンスが起こると、仕事の能率や車の運転操作にも影響が出てしまうので、脳に移行しにくい抗ヒスタミン薬を処方してもらうなど、医師または薬剤師に相談してみましょう。
■ヒスタミンの働き
ヒスタミンは、鼻の粘膜ではアレルギー症状を引き起こしますが、脳の中では日中の覚醒、記憶力増強、運動量の増加、摂食行動の抑制、痙攣の抑制、ストレスによる興奮の抑制などに働くとても大切な物質です。
■アレルゲン免疫療法
最近新聞などでよく取り上げられているアレルゲン免疫療法とは、アレルギー疾患の原因となるものを投与することによって免疫力を強くし、実際に花粉症のシーズンが到来したときに起こる症状を緩和する治療法です。全国の医療機関で保険適用となるのは、今年中の予定です。アレルギー性の治療法であるため、専門的な知識や技術を持った医師の下での治療が必要となります。また、根拠はありませんが、治療期間は3〜5年と長期間かかります。一番重要なのは、体にアレルギーの原因を投与するため、アナフィラキシーショックを起こす可能性があります。もしこの治療を受けられるのであれば、しっかり先生から説明を聞いてください。治療法は、アレルゲン治療薬を舌の下に1滴垂らし、そのまま2分間じっとする治療法です。以前からアレルギーの原因物質を皮下注射する治療法がありましたが、手間やお金がかなりかかりましたが、今回の舌下免疫療法は非常に待望の治療法ではないかと思います。発現メカニズムは、推測ではありますが、事前に抗原を出しておくと、TN細胞が実際に花粉症のシーズンになったらアレルギーの反応を抑えるといわれています。臨床効果では、症状の改善や薬の減量といったことが期待できると思います。この舌下免疫療法が今後どのように主流になるのか、様子を見ないとわかりませんが、今後出てきた新しい治療法を保険適用として使うことが出来る治療法ともいわれています。治療に3〜5年かかりますので、治療費はそんなに高価ではないと思います。なぜなら、高価な薬にしてしまうと、長期間の負担から患者さんが途中でリタイアしてしまう可能性があるからです。
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