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メディカルアドバイス

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2013.06.01 食物アレルギーの最新事情~食べながら治す~/たけだ通信102号より

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宇治武田病院 アレルギー科 部長 藤本 雅之



宇治武田病院に着任しアレルギー科を開設し3年目に入りました。成人では蕁麻疹、小児では食物アレルギーの患者さんが一番多く来院されています。今回は有効な治療法が少ない食物アレルギーの最新事情について、まず食物アレルギーの現状をお話します。

食物アレルギーの定義は「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」とされており、免疫学的機序とはある食物(アレルゲン)、その食物に対する特異LgE抗体と肥満細胞によるI型アレルギーが多く即時型症状を皮膚、呼吸器、粘膜、消化器、さらに全身(アナフィラキシー)に起こします。小児科でよく診る乳児アトピー性皮膚炎でも約半数に食物アレルギーを伴っており、非即時型症状(遅発型、遅延型)として湿疹や皮疹の悪化がみられることがあります。有症率は日本では乳幼児の5~10%、学童以上では1~3%とされており、原因食物の頻度は鶏卵、乳製品、小麦、甲殻類、果実類、そば、魚類の順になります。

診断法としては、まず問診にアレルゲン特異LgE抗体価、皮膚試験(プリックテスト)、ヒスタミン遊離試験(HRT)、食物除去試験(原因食物を2週間完全除去し、症状改善の有無をみる)、さらに食物負荷試験(原因アレルゲンの同定と耐性獲得の診断目的の2種類がある)等が挙げられます。治療法については、即時型症状に対して、抗ヒスタミン剤、ステロイド、エピネフリン注射(自己注射のエピペンRがあり、一昨年9月から保険収載された)等で、アナフィラキシーにも対応できます。日常的な治療としては原因食物を食べない除去食療法が中心で、補助的に抗アレルギー剤の内服も行います。

予後については腸管免疫が発達する(分泌型IgA抗体の産生が増加)1~2才から原因食物が食べ始められるようになり、特に鶏卵、牛乳、小麦では80%が学童期までに耐性獲得つまり治りますが、残りの20%ないし落花生、ソバ、魚介類等は除去食療法では一生治らない可能性があり、有効な治療薬もないのが現状です。

そこで10年程前から欧米で始まり我が国でも試みられている治療法に経口免疫療法(経口減感作療法)があります(表)。アナフィラキシー歴のある患者に非常に少量から始め増やしていき、通常量の原因食物が摂取できるようになります(数週間で行う急速法と半年~1年かける緩除法があります)。スギ花粉症で行われている皮下注射での減感作療法と似ており、現象としては特異IgE抗体価の低下とアレルギー反応を抑える特異IgG4抗体価の上昇があり、調節性T細胞の活性化が関与しています。但しこの治療法の有効な患者が35~70%と高くなく、通常量に到達してもしばらく食べずにいると再び症状が出る、いわゆる脱感作状態までは行くが耐性獲得まで至らない例が多いことが判明してきており、まだまだ研究段階の治療法です。

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さらに最近の考え方で生後6ヶ月までに低用量の食物アレルゲンの炎症の起こった皮膚への暴露で2型ヘルパーT細胞が誘導され食物アレルギーが発症するが、経口暴露で1型ヘルパー及び調節性T細胞が誘導され耐性獲得が起こる二重抗原暴露仮説が提唱されています(図、J Allergy Clin Immunol 2008;121:1335より)。つまり乳児期は湿疹はなるべくない状態にし、さらに離乳開始を遅らせずに卵、牛乳等を摂取する方が食物アレルギーの発症を抑えるのではないかと言われています。今までの常識をくつがえすことになるのですが、実際の診療でも強く感じています。

kenko.medical.1306_3.jpg最後に当科では食物負荷試験を入院で積極的に行っていますが、実際除去食のみ漫然と続けられ、経過と検査値(特異IgE抗体価)から判断すれば食べられるのではと思う子供さんがたくさんおられます。試験希望の方は少し勇気を出して、「いつ食べるの?」「今でしょ!」の気持ちでご相談ください。



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