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われわれは選ばれた民なのか
神が創りたまいし「ヒト」の心を焼灼する不整脈科医たち
康生会武田病院 不整脈治療センター 所長 全 栄和
不整脈の治療は20世紀末から大いに変化し、従来の抗不整脈薬による観察治療から、カテーテル心筋焼灼術による根治治療へと大きな地殻変動がありました。
この治療は、ヒトの魂が宿る「こころ」ともいえる心臓にカテーテルを入れ、心筋に焼灼というダメージを与え不整脈を治療するという、言ってみれば人類創造の神に反する治療ともいえるかもしれません。
そもそも、初期には、体罰にも使われる電気ショック(直流通電エネルギー)を用い房室伝導の除去が目的で始まった治療方法であり、この時代には多くの批判がありました。
本邦においてはこの治療の黎明期(1980年代)にパイオニアとして、旧約聖書の預言者モーゼのようにわれわれをアブレーション治療の道へと導いた家坂義人先生(現土浦協同病院院長)に教示をうけこの道に入りはや20年以上が経ち、致死的不整脈である心室頻拍や根治できない不整脈とまでいわれた心房細動までを治療対象としています。
康生会武田病院では平成12年11月に一人部長の不整脈科が開設。平成20年4月に不整脈治療センターと改称され、開設から10年以上が経過しました。
この間に所属していた木田順富医師と仁科尚人医師は現在医仁会武田総合病院で活躍し、山口和重医師は2008年7月に独立し、奈良の高井病院で活躍中です。一方時期を同じくして、同年4月に群馬県立心臓血管センターで研鑽を積んだ万井弘基医師が、12月からはドイツのライプチヒで最新の心房細動アブレーション治療の経験を積んだ江里正弘医師が不整脈治療センターに加わり、学術的にも設備的にも対外的に国内外のトップセンターに比べ遜色のない陣容で活動できるようになりました。江里正弘医師は現在、医仁会武田総合病院の不整脈科部長として他の2人とともに活躍しています。康生会武田病院の陣容は、前述の万井医師と、本年4月から関西医科大学病院で不整脈グループの中心人物であった佐藤大祐医師が加わり、当院研修医から私が育ててきた北嶋宏樹医師、寺本邦洋医師とともに5名で、日夜治療に励んでいます。
現在この心房細動のアブレーション治療は焼灼による血栓形成を予防する目的で開発された、焼灼用カテーテル電極先端から生理食塩水を流しながらアブレーションを行うシステムと胸部の造影CTから立体的な左心房を構築しこれの中でカテーテルをあたかも操作しているように視覚化する三次元ナビゲーションシステムを使うのが主流となっています。このシステムには2種類のものがありますが、当不整脈治療センターでは両方とも使用し、しかも最新のソフトを使用しています。
治療のみならず教育も重要で、この最新のシステムを使った治療法の伝道ともいえるライブデモンストレーションも熱心に行い、院内ミニライブを年に4回、大規模なライブを年に1回行い、この治療の布教に努め、経験、知識、知見の共有化に努めています。
不整脈のカテーテル治療の一方で、ペースメーカー、ICD治療、またペーシングによる心不全に対する心室再同期治療も数多く行っていますが、この治療の合併症として一番重篤なものが感染です。これが発生するとペースメーカーのみならず血管内に留置した電極も抜き去る必要があります。植え込み後比較的初期の患者さんでは用手的に容易に抜ける場合もありますが、年数を経ていると癒着により困難な場合がほとんどであり、電極は残して、機械のみを取り去り反対側に新たに植え込むことが通常行われています。このような例に対して、新しくエキシマレーザーシステムにより電極と血管の癒着を解除し電極を抜いてくる抜去法を京都府下で初めて行いました。
今後はペースメーカー感染に苦しんでいる患者さんへの良い福音となると思っています。
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