お薬との正しい付き合い方を理解していただくために、また、日々進化するお薬のことを知っていただくために、「くすりのお話し」をさせていただきます。
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。
宮津武田病院 薬局 科長 河原 明美
お薬を手にした患者さんは何を気にされるでしょう。「病気を治すためどんな薬が出ているの」「いつ飲むの」と確認されると思います。薬剤師は調剤した薬をお渡しする時に、患者さんに薬と薬袋の記載事項を確認していただきます。薬袋には、1日○回や、朝・昼・夕・眠前に加え、食後・食前・食間などが記入されています。今回は、この「いつ飲むの」について考えましょう。
■食べ物の影響
-食 後-
薬には、食後に飲むことにより吸収がよくなり、効果が上がるものがあります。脂質異常症の治療に用いられるEPA製剤のイコサペント酸カプセル剤は、腸からリンパ中への移行に、胆汁酸の分泌や、食物の成分が担体として必要なため、これらを活性化される食直後に服用するのがよいとされています。抗真菌剤のイトラコナゾールカプセル剤もその一つで、空腹時に投与すると最高血漿中濃度は食直後の約40%にとどまるため、空腹時ではなく食直後の服用となっています。
-食 前-
逆に、食後に飲むことにより吸収が低下して効果が下がるものがあります。骨粗鬆症の治療に用いられるアレンドロネートは、コーヒーやオレンジジュースで服用することにより吸収低下が起こり、尿中排泄量が約60%減少するといわれています。これは、含有するカルシウムやマグネシウム等の電解質と結合することが原因であり、これらを多く含むミネラルウォーターでの服用も避ける必要があります。したがって、飲む時間は、胃の中に何も無い起床時に水で服用することになります。糖尿病性神経障害の治療に用いられるエパルレスタットは、食前服用と食後服用と比べると、食後服用の最高血漿中濃度が約30%低下します。ま
た、この薬の作用が血糖値の高いときに強く発揮されることから、食前(食事30分前)の服用が推奨されています。
■薬の効果と食事
薬の効果と食事の関係も考慮する必要があります。
特にインスリン製剤です。最近、超速効型インスリン製剤が用いられることが多くなりました。この製剤は、従来のレギュラーインスリンより作用発現が15分以内と早く、30分以上前に注射すると低血糖を起こす可能性があります。かといって、低血糖を恐れて食後に注射すると血糖値のピークが高くなる可能性があります。食事を用意してから注射してご飯を食べる「食直前投与」をする必要があることが解ります。また、食後過血糖改善剤は、スクラーゼやマルターゼなどの活性を阻害して二糖類からグルコースへの分解を遅らせることで食後の急激な血糖値の上昇を防ぐことを目的としています。食事より早く服用する必要があり、飲み忘れの防止のためにも食事の直前に服用するようになっています。紹介した食事との影響以外にも、ホ ルモン剤など日中の活性を高くするため朝服用するのがよいものや、喘息などで明け方の効果を高くして発作を抑えるため、夜に服用したほうがよいもの、また、薬の作用が長く続くため間隔をおいて服用する必要のあるものなどがあります。
生活リズムや食習慣は、個々に異なります。薬を服用する時も考慮し、より安全で効果的に薬を用いましょう。
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