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アスニー講座 からだを知ろう

アスニー京都で開催される、武田病院グループのスタッフによる健康講座です。

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

2013.05.22 歯周病と糖尿病について

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歯周病と糖尿病について


医仁会武田総合病院 歯科・口腔外科 部長 後藤 和久


■歯科の二大疾患
◎う食(虫歯)
歯の成分が脱灰して崩壊すること。細菌(ミュータンス)、歯の質、糖質(特に砂糖)が重なったとき、時間の経過も関係して虫歯になる。

◆症状...最初は白濁したり、歯の光沢がなくなり、進行するにつれ穴が開いて、放っておくと歯髄(歯の神経)に虫歯が到達し痛みが生じます。虫歯が痛かったのに突然痛みがなくなってしまうことがありますが、それは治ったのではなく、歯の中の神経がやられてしまって感じなくなったためです。そうなると、歯根部分まで虫歯が進んでいってしまうので、膿んだり、噛めない状態で歯が残ることになってしまいます。

◆原因...虫歯は口の中に歯がないと虫歯にはなりません。細菌と歯を結ぶ糖質(特にグルコース)が重なることや、時間的な経過がないと虫歯にはなりません。口の中の酸性アルカリ性度は中性の7Phですが、物を食べるとPhが落ちてしまいます。歯の脱灰を起こす臨海ph5.5以下になってしまうと虫歯になってしまいます。しかし食後40分ぐらい経過すると、唾液の作用によってPhが回復してきます。いつまでもだらだら食べるのではなく、食べるときは食べる、その代わり食べ終わったら口内の環境を良くする、時間をあける、歯磨きをするなど、工夫しながら虫歯予防をしてほしいと思います。

◎歯周病
歯周病は、歯を支えている歯肉とその下の骨までが痩せてしまって歯を支えられなくて抜けていくような病体です。基本的には虫歯と一緒で、細菌のコントロールが必要となりますが、虫歯のように詰めたり削ったりするだけでは治らないのが歯周病の特徴です。

◆症状...歯周病は歯だけではなく、さまざまな病気と密接な関係にあると言えます。歯周病が原因で呼吸器疾患や脳血管疾患、それから女性に関しては、低体重児の出産だったり早産になるということも言われています。あと糖尿病についても心配だといわれています。

◆原因...歯周病になりやすい原因として、歯磨きができていないことが一番の大きな原因です。その原因として、歯並びがよくない、片噛みをする、指をしゃぶるとなどがあります。また、治療した部分が治りきっていない、もしくは、何らかの理由で治療が途中で完全に治していない歯があるとその周りに汚れがついてしまいます。そうすると、汚れがどんどん固まって歯石になり、歯ブラシでは取れない状態になってしまって、歯周病を悪化させると考えています。

■糖尿病と歯周病
☆「ひみこの歯がいーぜ」
●「ひ」...肥満を防ぐ
よく噛むことで満腹中枢が刺激され、たくさん食べなくなります。噛むことこそダイエットの基本です。

●「み」...味覚の発達
よく噛むことで食べ物本来の味がわかります。唾液の中の消化酵素により味わい深く感じ、ほぐれることで細かいわずかな味も味わうことができます。

●「こ」...言葉の発音がはっきり
噛む、しゃべるといった行為は、口の周りの筋肉や舌を働かせます。コミュニケーションこそ人間の大事な能力であって、これを維持することが大事な要素となってきます。

●「の」...脳の発達
噛むためには左右に動かしたりするときに使う筋肉があります。その筋肉を使って食べ物を小さくして食べやすく飲みやすくしています。そういう点では脳だけではなく、口全体から顔全体への刺激もあります。

●「歯」...歯の病気を防ぐ
咀嚼することで唾液が反応し、食べ物をスムーズに飲み込むことができます。唾液が出ると口腔内もきれいになります。

●「が」...がんの予防
唾液に含まれる酵素には、がん性の物質を吸収する働きがあるといわれていて、食べ物を30秒以上噛むことが必要です。ただ、1秒で1回噛むことは不可能ですので、ひと口30回以上噛んでください。

●「いー」...胃腸の働きを促進
食べ物を噛まずに丸呑みすると、消化不良の状態で腸までいってしまいます。噛んで小さくすることで胃や腸の負担を小さくすることができます。

●「ぜ」...全身の体力向上と全力投球
ぎゅっと噛む(歯を食いしばる)ことで力が出ます。単位あたり100キロぐらいかかる人もいます。入れ歯になると、自分で噛んだ力の6分の1から10分の1しか力が出ないといわれています。どんなに合っている入れ歯でも、歯の根元が無いと支えきれないからです。ですから、自分の歯を残して噛むことがとても重要です。

■歯周病を治療して糖尿病を軽減
糖尿病の患者さんは、健康な人より歯周病にり患している割合が2、3割高いと思います。歯周病で歯を失うと噛むことができなくなるので、脂肪や糖類が多く含まれる柔らかいものを食べ始めます。そのため糖類が多ければ血糖値が上がり、悪循環の始まりです。歯周病の方も最初は歯茎が歯を支えていますが、炎症が起こって歯茎が痩せて骨も溶けてやがて歯が無くなってしまいます。これは細菌感染と細菌感染(エンドトキシン、リポ多糖など)によって起こる炎症という体の防御反応です。体内には体を守るための炎症を起こしてそこで食い止めようとする物質(サイトカイン)がいくつかあります。その中には、いわゆるがんをやっつけるような強力なものもあるのですが、これが体内もしくは局所の中にいろんな働きを示すことで、糖尿病に影響することがあるのです。その大元になるのが糖尿病と歯周病です。そして一番の元は細菌で、歯垢に固まっています。つまり歯周病の治療によって改善するといわれているのです。

■唾液について
唾液は一日に大体1.5リットルぐらい出ていて、100ミリリットル中に8億~10億ぐらい細菌がいます。また、プラーク(歯垢)があればさらに10倍から100倍の量になります。口の中には唾液腺があって、ちょうど舌の裏のところに米粒ぐらいの唾液の袋があって、そこから分泌させて口の中を潤しているのですが、さまざまな物質が出て、口の中をある程度きれいにすることができます。唾液の作用には、潤滑作用、粘膜保護作用、咀嚼の補助作用、洗浄作用、あとは消化作用であるアミラーゼを出すことによって、口溶けがよくなります。また、感傷作用といって、口内の酸アルカリ性の中和をしたり、熱い物や冷たいものがいきなり胃に入らないように体温に近づける作用もあります。それから、抗菌作用といって酵素や免疫物質も唾液の中には入っています。あとは排泄作用といって痰やつばなど口の中の汚れを出す補助をしています。このように、口腔免疫と言って、歯周病と唾液はすごく大事な役割を果たしているのです。

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