武田病院グループ:保険・医療・福祉のトータルケアを提供する京都の病院

  1. トップ
  2.   >  広報・読み物
  3.   >  健康のために
  4.   >  アスニー講座 からだを知ろう
  5.   >  お薬について

アスニー講座 からだを知ろう

アスニー京都で開催される、武田病院グループのスタッフによる健康講座です。

※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

2013.01.30 お薬について

kenko.asny.130130_1.jpg
 お薬について ~予防接種を中心に


医仁会武田総合病院 薬局長 馬瀬 久宜


■予防接種
●ワクチンとは
人間には細菌やウイルスによって引き起こされるさまざまな感染症があり、これらを防ぐもっとも有効な手段がワクチンで、
 *感染の原因となる細菌やウイルスを精製・加工して病原性や毒性を弱めたり、
  無くしたりして、体にとって安全な状態にしたもの
 *本当に病気にかかってしまう前にワクチンを接種することで免疫力を作るためのもの
です。人間は入ってきた敵に対して免疫を作るという便利な機能を持っていますので、それを活用してワクチンを接種し、その病気に感染する前に、免疫力を作るわけです。ワクチンは、感染症にかからないよう予防するためのものであって、治療するためのものではありません。ですので、健康な人への接種が基本となります。現在、ワクチンで予防できる疾患は、30種類ほどあり、天然痘やインフルエンザ、子宮頸がん、肺炎球菌、特に海外でかかる可能性がある黄熱病や狂犬病、腸ジフスなどがあります。予防接種ワクチンは、20世紀の予防医学公衆衛生分野に最も大きな貢献をした重大功績の一つといわれています。

●ワクチンの役割と働き
ワクチンの役割は、自分がかからないために、もしかかっても症状を軽くするために、周りの人に移さないためのものです。
ワクチンの働きは、子どもが麻疹にかかって自然に治るとこの子は麻疹にかからないとよく言われますね。これはお子さんの体に麻疹に対する免疫が出来るからです。一旦かかってしまうと体がその麻疹のウイルスを記憶し、今度そういうウイルスが体に入ってきても、免疫力が働いてやっつけてしまうわけですね。ワクチンは、こういった自然感染と同じような働きで体の中に免疫を作り出す働きがあるのです。ただし、ワクチンが実際に病気を発症させることはありません。

●ワクチンの種類
生ワクチン
 →生きた細菌、ウイルスなどの毒性を極力抑えたもの。
 →1回打つだけで比較的高い効果が得られる。
不活化ワクチン
 →細菌やウイルスの毒性を完全に無くしたもの。
 →何度か打つことでだんだん抗体レベルを上げる
トキソイド
 →細菌の毒性を無くして免疫だけを作るもの

●ワクチンの副反応
一番多いのは、局所が赤く腫れ上がったりする局所反応、じんましんが出たりするアレルギー性反応、呼吸が苦しくなったり、ひどい時にはショック状態になるアナフィラキシー反応があります。ワクチンは怖いものだと思われるかもしれません。ですが、ほとんどの場合が、注射の箇所が少し赤くはれたり、少し熱が出る程度です。

■インフルエンザの病態と対処法
●インフルエンザとは?
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによる急性の呼吸器感染症です。流行期は、例年11月から4月に数百万規模で流行ります。潜伏期は1~5日、平均は3日間です。特徴は、感染力が強いということと、飛まつ感染で人から人へと短期間で感染が拡大することです。飛まつ感染は、せきやくしゃみで放出されたウイルスを別の人が吸い込むことで起こります。接触感染は、ウイルスが付着したものに触れたあと、目や口などに触れてしまうことによって粘膜や結膜などを通して感染します。インフルエンザはせきやくしゃみなどによって別の人の上気道で感染し、上気道や肺でも急激に増殖します。インフルエンザウイルス1個が誰かの体に入って感染すると、8時間後には100個に増え、16時間後には1万個、24時間後には100万個に増えるため、感染が急速に広まるのです。

●インフルエンザと風邪との違い

インフルエンザ
特徴...38度以上の高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状。10歳未満の子どもや70歳以上の高齢者は、重症化する可能性が高い。
症状...感染して1~3日以内に発症し、1週間以内に完治する。その間、高熱や関節痛など全身症状を発症する。

風邪
特徴...喉の痛み、鼻水、くしゃみ、咳などの部分的な症状
症状...喉の痛みや発熱などを発症するが、1週間以内に完治する。

●インフルエンザの合併症
特に高齢者は細菌の二次感染による感染症に、6歳未満の乳幼児はインフルエンザによる脳炎、脳症に気をつける必要があります。インフルエンザに関する二次感染の肺炎は、3種類に分類されます。純粋なウイルス型の肺炎、細菌混合型肺炎、二次性細菌性肺炎で、インフルエンザの重症化には二次性細菌感染によるものが非常に多く占めており、インフルエンザを発症してから4~14日後に発症し、熱は一旦下がるのですがもう一度再び上がってきます。インフルエンザの合併症として肺炎を併発すると重症化が非常に進むため、ひどい時には入院での治療になります。インフルエンザの重症化や合併症を引き起こす可能性が高い方は65歳以上の高齢者の方、妊娠28週以降の妊婦の方、あと肺疾患、心疾患、腎疾患、代謝異常、免疫不全状態など、何かしら疾患を持っている人はリスクが高いといわれています。

●インフルエンザの予防
インフルエンザの予防にはワクチン接種、抗ウイルス薬の予防的投与があります。ほかには、人ごみを避ける、マスクをする、うがいをする、手洗いを行う、室内は適度な湿度を保つ、栄養をバランスよく取る、休養と睡眠を十分とって体力をつける、などが大事なところだと思います。インフルエンザワクチン接種は、65歳以上の健常の高齢者に関しましては、約45%の発病を阻止して、約80%の死亡を阻止し、1~6歳未満の乳幼児に関しては、有効率は20~30%という結果が出ています。インフルエンザワクチンには、接種することが適当ではない場合もあります。例えば、37.5度以上の発熱が認められる場合は、熱が下がってから受けてもらいます。また、重篤な急性疾患にかかっている、インフルエンザワクチンを打ってアナフィラキシーショックのような症状を起こしたことがある、アレルギーを起こしたことがあるなど、ショック症状やアレルギー症状が再び起こる可能性があるので接種不適合と判断されることがあります。

前の記事 一覧を見る 次の記事

Copyright © 2015 Takeda Hospital Group. All rights reserved.