お薬との正しい付き合い方を理解していただくために、また、日々進化するお薬のことを知っていただくために、「くすりのお話し」をさせていただきます。
※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。
城北病院 薬局 科長 小畑 友紀雄
紫外線の強くなるこれからの季節、お肌の「シミ」対策にお悩みの方も多いのではないでしょうか?
今回は、その中でも「肝斑(かんぱん)」とその治療薬についてのお話です。
1.「肝斑」ってなに?
「肝斑」とは顔面の後天性斑状色素増加症で、いわゆる「シミ」の一種ですが、30代から40代の女性に発症することが多いといわれています。特徴としては、薄い褐色で、ほほ骨に沿って左右対称に、もやっと広がっている場合が多いようです。「シミ」の色が肝臓の色に似ているから「肝斑」と呼ぶという説が有力ですが、肝臓の病気とは全く関係ありません。意外にも5~10%が男性例と報告されています。
原因としては、妊娠・月経不順・経口避妊薬の服用により誘発あるいは悪化するため、ホルモンバランスのくずれであるといわれ
ています。また摩擦等の外的刺激、遺伝や化粧品の影響なども原因の一つであるといわれています。
一般に紫外線で悪化したり、レーザー治療で悪化するといわれていましたが、最近になって肝斑治療が可能なレーザーが開発されました。城北病院では、本年4月に導入されたメドライトC6®によって肝斑のレーザー治療を実施しています。
日々発達する治療法ですが、お薬の投与による治療が重要な方法であることは現在も変わりません。
2. 治療薬について
1)内服薬
肝斑は、女性ホルモンや紫外線など皮膚の内外でさまざまな刺激を受けることによって、メラノサイト活性化因子がメラノサイト(色素細胞)に作用し、メラニンの産生を促すために発症すると考えられています。 プラスミンはメラノサイト活性化因子の一つと考えられていますが、このはたらきをブロックするのが「トラネキサム酸」です。
トラネキサム酸は、メラニンを作り出す前の段階でメラノサイト(色素細胞)の活性化を阻害し、肝斑の発生を抑えると考えられています。
また、「ビタミンC製剤」もメラニン色素の生成を抑制すると言われており、色素沈着に対して使用されます。
現在、肝斑の治療薬としては街の薬局で薬剤師の説明を受けて購入できる第一類医薬品のトランシーノ®が発売されています。 その中には1日量としてトラネキサム酸が750mg、ビタミンCが300mg含まれています。また服用期間は2ヶ月以内と定められています。
当院の美容皮膚科では医療用医薬品のトラネキサム酸、ビタミンC製剤およびビタミンE製剤の併用処方を中心に治療しますが、1日量としてトラネキサム酸が1500mg、ビタミンCが750mgで、市販品の約2~2.5倍の用量となっております。また、専門の医師が管理を行うので安心です。なお、この際の治療は保険外診療(健康保険が適応されません)となります。
保険外診療というと高額なイメージがありますが、お薬代としては市販薬を服用する場合とさほど差はなく、ジェネリック医薬品を使用すると安くなる場合もあります。
2)外用薬
美白効果をうたった市販の化粧品などはたくさん発売されておりますが、当院ではケミカルピーリング用にレチノイン製剤やグリコール酸のクリーム・ローション製剤、そして美白効果の高いハイドロキノンクリーム、ビタミンCクリームなどを取り扱っており、こちらも医師が診察の上、処方します。
3. 必ず専門医のアドバイスを
一般に「シミ」と云われるものにはこれまで述べた「肝斑」のほかにも、老人性色素斑、日光黒子、ソバカス(雀卵斑)、後天性真皮メラノサイトーシスなどさまざまなものがあります。
治療法に関しても内服薬、美白外用剤、レーザー治療、ケミカルピーリングなどいろいろありますが、それぞれの「シミ」の種類に
合った方法を選ばなければかえって悪化させてしまうこともあります。あなたの「シミ」がどのようなものか専門の医師に診断を受け、適切な治療を行っていただきたいと思います。
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